「メゾン マルジェラ」のシグネチャーバッグである“5AC”。今回、日本人アーティストのユニークなレンズを通してバッグを再解釈する“5AC”ハッキングプロジェクトを、「メゾン マルジェラ」ブティックと特設ディスプレイスペースでご紹介します。
2024年春夏「Co-Ed」コレクションにも適用された「ハッキング」は、本プロジェクトに「インフォーマル・フォーマリティ」のエレベートされたムードをもたらし、慣れ親しんだものからの脱却をたたえます。
“5AC”を特徴づけるのは、ライニングという内側の要素を匿名化し、デザインや機能として第二の用途を見いだすメゾンのコード“アノニミティ・オブ・ザ・ライニング”です。名前の由来は、“133t speak : リートスピーク”に着想を得てフランス語のバッグを意味する『SAC』を符号化し、“5AC”と表したものです。
BIEN
ドローイングを中心に様々な表現を手掛けるBIEN。“Visible observation for 5AC”には、複数のMDF彫刻と“5AC”マイクロが用いられました。
1つの視点から正面性をもって鑑賞することを想定した絵画や映像は、異なる角度から見ることでそのモノが内包しているイマジナリーな見方から外れ、物質としての絵の具、キャンバスの裏地などの現実的な側面を見ることができます。つまり、イメージが付与された物質と、そうではないただの物質としてある物の境界が見えるのです。
それは、物事が持つ様々な側面を私たちは一様には捉えきることができないことも表しています。
“5AC”というバッグが様々なサイズで展開されてきたことにより、小さいものはもはやアクセサリーとしての用途が強調され、バッグという形を保ちながらも、その既存の概念を壊しながら揺れ動く様が彼の彫刻のシリーズと重なります。
通常は“バッグ”として認識している“5AC”が、その名称を外してしまえば彫刻作品と同様に実は一義的なジャンルで分けられない、何か得体の知れない物であり、異物としてそこに再び現れることを目的としています。