さあ、最後に「一押し作家のこの一点」のご紹介です。
山本秀平「白砡描割龍図香炉」
山本秀平は1989年生まれの九谷を代表する若手人気作家です。父山本芳岳に師事し、九谷の伝統的な技法である「赤絵細描」を習得。轆轤師でもある兄山本浩二が制作した器に施された赤絵の作品は大変人気が高く、毎年ほぼ完売になります。その山本秀平が、近年再現に成功した新たな技法で制作されたのが、この「白砡描割龍図香炉」です。
赤を均一に塗った上から半透明の白で描く「砡質手(ぎょくしつで)」という技法は、1913年に初代中村秋塘が生み出した技法で、以来誰もその技を習得できず、再現は不可能とされてきました。 その技を、100年以上の時を経て現代の九谷に見事に再現させたのが、山本秀平の「白砡描割(はくぎょくかきわり)」という技法です。半透明の白で描く文様は、一度に厚く塗るとムラが出てしまう為、薄く均一に描いては焼くということを何度も何度も繰り返しながら文様に厚みを付けていきます。その間ほんの些細なミスも許されない非常に高度な技術力が求められる技です。 まさに、父"山本芳岳"から受け継いだ「赤絵細描」の緻密で繊細な筆さばきが無ければ成しえなかった技といえます。現代の九谷に蘇り、そして新たな進化を遂げた山本秀平の「白砡描割」の作品は、他の九谷焼にはない独特の白の美しさに包み込まれた、いつまで見ていても飽きのこない魅力に溢れた作品です。是非とも会場にて実物の作品をご覧ください。もっと知りたい!と関心を持っていただけましたら、ぜひ私にお声がけくださいませ。催しについてはこちらもご確認ください。※28日(木)公開