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古い木と緑のにおい 文人墨客が集い遊んだサロン「帆足本家 富春館」
大分県大分市中戸次(なかへつぎ)にある帆足本家は、文化と歴史が残る戸次(へつぎ)町で430年以上続く旧家です。1775年から酒造りを営み、その一方で豊後南画家 田能村竹田などの文人墨客や芸術家を応援するパトロン的存在という顔も持ち合わせていました。富春館は、慶応元年(1865年)に建てられた母屋の館号です。
現在、「帆足本家 富春館(ほあしほんけ ふしゅんかん)」は、江戸時代から昭和初期までに建てられた歴史的建造物を生かし、母屋、離れ、洋館、蔵などをギャラリー、レストラン、菓子処とし、この土地に根付く文化や先人の思いを繋ぐべく、地元の食や現代クリエーターの作品などを販売しています。
帆足家は、かつて、豊後を治めていた大友氏と主従関係を結び、1586年(天正14年)に大分県戸次市村に居を構えました。その後、江戸時代に入ると臼杵藩主稲葉氏領の庄屋として藩主に仕え、農業のかたわら酒造を営み家財を成しました。また、帆足家は地元の名家として儒学者 頼山陽や文人画家 田能村竹田などと交流、芸術家や文学者のよき理解者であり、その邸宅は文人墨客を迎え入れたサロンでもありました。
7月10日(水)から6階 コトコトステージ61、プロモーションスペース61では、“帆足本家の暮らしそのまま美術館展”と題したイベントを開催。現代のサロン「帆足本家 富春館」総支配人 帆足めぐみさんのスペシャルインタビューをお届けします。
◆母屋である「富春館」の名前の由来
――母屋である「富春館」の名前の由来を教えてください。
「帆足本家が当時応援していた大分豊後竹田出身の文人画家 田能村竹田と、儒学者 頼山陽は交友関係があり、竹田からの依頼で、山陽が館号を『富春館』と名付けました。春という漢字は、季節の春という意味もあるかもしれませんが、青春や老春などの“人生の良いとき”という意味の『春』、それが富む館という意味で名付けられたのだと聞いています。」
――住居として使用されていた帆足本家の門戸を開くきっかけや経緯を教えてください。
「帆足家に嫁いで10年くらいは、子育てをする普通の専業主婦でした。もともとはギャラリーや菓子屋がしたかったワケではなく、この帆足家を生かす事ができたら、ただその一心でした。今思えば、それには何が相応しいだろうか?と日々考えていましたね。
父が、大分市美術館ができるタイミングで先祖代々受け継がれた豊後南画家 田能村竹田の掛軸を寄託した事をきっかけに、大分市に酒蔵を寄付しました。その父が他界した後、主人が勤めていた銀行を辞め、歴史的建造物が残るこの場所を生かしたいとの思いがよぎりました。
大分市に遺された歴史的景観に対しての修復助成金制度を利用し、『富春館』の景観は整備が進んでいきましたが、家屋には、まだたくさんの物が残っていました。物を仕分けしながら家具や古き道具類を片付け、掃除、修復、整理をし、ひとつひとつの建物をお店にしていきました。それは、本当に長い道のりでした。
最初はアルバイトを1人雇って、明治の蔵でカフェを始めたんです。アルバイトさんと一緒に整理をしながらお掃除をして、埃だらけの中、力も根気もいる気の遠くなる作業でした。あの時は私も若かったからできたのかもですね。(笑)
この家で長きにわたり使われてきたものをなるべく捨てずに、逆に今の時代だからこそ希少価値がある道具や物を生かして、お買い物したり、食事をしたり昔体験をしながら、“事”を人々が楽しめる空間を作りたい。酒蔵にあった酒樽の蓋をテーブル にしたり、長持ちをひっくり返してお茶を出したり、帆足家にあるものを使って夢中で店作りをしました。
『帆足本家 富春館』は、“甦る文人サロン”というテーマを持ち、2001年にスタートを切りました。一筋の光に向かって行く、不安と期待が入り混じるような気持ちでした。」
◆歴史的建造物や庭、調度品から感じる職人への思い
「帆足本家は農業の傍酒造業を営み、商人でありながら、武家にしか許されない武家屋敷を建てることを許されました。この場所には、至るところに職人が時間をかけて作った手仕事を感じられるものが残っています。
昔の方は身体が道具で、勘を働かせ、手も足も頭もすべてを使いながら手仕事で物を作っていました。今の時代はどんどん便利になってきて、生活の中で考えなくても不便でなく、スピードもある。しかし、『富春館』には、まだ先代が知恵を働かせて生活してきた文化や余韻があるのです。その空気感が、クリエーターたちを呼び寄せたのかもしれません。現代のクリエーターも同じように身体を道具としてものづくりをしていて、昔の職人と通じるものがあると感じています。また、交流のあった文人墨客の作品もたくさん残ってます。漢詩、掛け軸の絵などからも、自由を愛しそれを表現する心を感じられます。」
◆「帆足本家 富春館」が選ぶもの
『富春館』では、クリエーターの作品を見て購入したり、戸次の特産品であるごぼうを使ったメニューや発酵を中心としたお弁当※をいただくことができます。 ※お弁当は、木製のお重に詰められて帆足本家に伝わる器などに盛られています。
――「帆足本家 富春館」では、どのような作品を商品としてラインアップされているのでしょうか。
「歴史あるこの帆足家に相応しいものは何か?を考え、さらに出会いを大切にしながら、暮らしを楽しむためのものを選んでいます。人との出会いやご縁は不思議ですね。導かれるようにいい方と繋がっていることは、ご先祖様の応援もあるのだと感じます。感謝しかありません。アクセサリーも、衣服も、お菓子も、値段やカテゴリーは関係なく、作家が思い思いにクリエーションしたもの。それをお客様に伝えるお手伝いができたら・・・という思いがあります。
人の手から手に渡り作り出されたものは、大切に長く愛着をもって使い続けたいものなんですね。例えば洋服は、糸を作る人がいて、編む人がいてそれを形にする人がいる。そこには作家の個性があり、人が身に着けることで完成します。それでいて、他の人が見たときにも『素敵だな、いいな』とか『心地よさそうだな』と段々と自分の生活の中にとりいれたくなる。そんなものをラインアップとして、選んでいます。」
◆「帆足本家 富春館」が提案する質のいい暮らし・質のいいもの
「質のいい暮らしや物というのは、自分の目線でそう感じるものなので、それぞれ違うかもしれないんですが、私の目線では、自分が着たり肌が触れた時に気持ちがいいとか、美しいと感じるかがポイントです。美しさについても人によって様々な見方があると思いますが、買って使い捨てするのではなく、見て楽しんで買ってきて、使いながら『いい物を買ったんだな』ってわくわくするとか、そんな風に思わせる物が質がいい物だと思うし、他の人にもそう思っていただける物をいつもご紹介したいと考えています。」
――帆足さんはもともといろんなものに興味があったのでしょうか。
「私自身はもともといろんなものに興味はなくて、とにかくたまたまここ(帆足本家)に嫁いできたのがきっかけです。(笑)
芸術家がここにきて、書画を描いたり、煎茶を楽しみ、学び、遊んだり・・・その余韻が続いてきたこの建物を残して伝え、そこに相応しい価値ある物を並べて皆さんにご紹介できたらという思いと、古い文化と現代の文化が共鳴するものを見つけて、この場所で伝えることに私の興味が芽生え、今に至りました。」
◆今後への思い
――今後目指していきたいことはありますか
「いろんな人が集まる場所で、ご縁を大切に、大分の文化を発信しながら、私が唯一無二だと感じるものを紹介していく。それが人から人に伝わって、大分、『富春館』に行きたくなる。そんな風になるといいな、という思いがあります。お客様一人一人が、『これいいな、すごく良かった』と実感していただけるようなものを提案して『帆足本家 富春館』が選んでいるものが『なんか好きだな』とか『裏切らないよね』と思っていただけるということを細く長く続けて、皆様の暮らしを楽しくしていけたらいいですね。」
――最後に阪急うめだ本店のお客様へ一言お願いします。
「『帆足本家 富春館』は、日本の文化や伝統を残し、伝えながら、現代の暮らしで人々が輝き、長く愛着を持って使える美しいものをご紹介いたします。いろんな人に紹介した くなるようなブランドでありたいと思いますので、今後とも応援をお願いします。是非、大分『富春館』へ遊びにいらしてくださいね。」
「帆足本家 富春館」 総支配人 帆足めぐみさん
◆帆足本家の暮らしそのまま美術館展「帆足本家 富春館」
今回の“帆足本家の暮らしそのまま美術館展”と題したイベントでは、人によって美しくクリエーションされた「心地いいもの」テーマに、愛情をもって使える “ずっと一緒にいたい” アイテムをご紹介します。
■帆足本家の暮らしそのまま美術館展
「帆足本家 富春館」
◎7月10日(水)~23日(火)
6階 コトコトステージ61
◎7月10日(水)~16日(火)
6階 プロモーションスペース61
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