[アウトドアスリーピング]
2022.06.27
売場ニュース
場所:淡路島マンモス
—はじまり—
3年ほど前、私がはじめて森の中で出会った人たちはリュック一つに詰めた荷物を広げ、火をおこし、自分の寝床を作っていた。一緒に森に来ていた友人からは、ナイフやブッシュクラフトのインストラクターをしている人達だと紹介された。リュック一つに詰めた少ない装備で一晩過ごす彼らを見て、自然の中を思うままに動き、楽しんでいる姿が羨ましいと思った。なんて自由な人達なんだろう。私は何をしたらいいのかさえ分からない。持ってきたアウトドアチェアに座って焚き火を見ているしかなかったが、ずっと座っているだけなのも疲れてくる。 体勢を変えようとアウトドアチェアでモゾモゾしていた私を見て「焚き火の側で横になるといいよ」と自由な人達は言った。
—五感で感じる—
地面に寝転ぶことには少しためらいがあった。椅子に座っている方が楽な気がするし、寝転んでる姿を人に見られたくないような気もする。最初はそういう抵抗する気持ちが湧き上がってきたので断っていた。だけど何度もすすめられて一度くらいはやってみるか・・・と恐る恐る焚き火のそばに寝転がった。地面に敷いたシート越しにゴツゴツした森の地形が伝わってくる、見えていた世界がグッと低くなりフワッと土の香りがした。隣には焚き火の光が見える、ゆらゆらしていて暖かい。布団にくるまっているような、そんな気分にさせてくれる。
仰向けになると、空が高くなったみたいだ。身体が地球に引っ張られて森の地形と一つになったような不思議な気持ちになった、ああもう起き上がりたくない。
「ほらね」と言ってみんなが笑った。
—自由って—
それから私は何度も自然の中へ行くようになった。
寒い時も暑い時も毎月一度、自由に森を動き回る彼らに知恵をもらいながら四季の移り変わりに合わせて寝床を変えながら眠った。時には焚き火で暖をとりながら、暑い時はハンモックで風を感じながら一晩すごす。自分の思いや感じたことが直接、持ち物や行動、思考に反映される自然の中が心地よかった。きっとこれが最初に羨ましく思った「自由」の正体なんだと思う。季節に合わせて寝床を変えることも楽しみの一つとなった。
—アウトドアスリーピング—
外で眠ったあと、家に帰ると寝室には五感で感じられるものが何もないように感じた。何もなくて味気ないような落ち着かないような。さて、どうしようかと考えた結果、森で寝転がって森や土の香りを感じたように家の中でもベッドの近くにアロマを置いてみることにした。自然の中では当たり前のようだけど、香りを感じながら眠るってお家ではささやかな贅沢気分。目を閉じて香りに意識を向けていると無心になれて癒されるのだった。
この連載では「アウトドアスリーピング」として、私が体験した自然の中での心地よさについて写真に絵を描くフォト・ドローイングと共に書き留めていきたいと思う。
(なるのだ編集室 川本まい)