売場ニュース
真ん中のシャツがコレクション第2号。典型的なお土産アロハの柄である。左右は仕事で使うのを口実に増やしていった初期のコレクションだ。
第1回に書いたが、はじめて所有したハワイアンシャツは父から譲られたものだった。2番目に所有したハワイアンシャツは親戚の方からの新婚旅行土産だ。数もたった2着だし、コレクションと言える状況ではなかった。じぶんにハワイアンシャツの知識も見識もまったくないし、まだコレクターと呼ばれるような存在では到底なかった。というか、その後コレクターになっていくとは夢にも思っていなかった。
そこからどうやってコレクションが増えていったかというと、仕事でハワイアンシャツをデザインのモチーフにしたり写真の演出として使うことを思いついたのだ。つまり資料や小道具として買い取ったものをじぶんの手元に残していったわけだ。広告やデザインに関係した仕事をしていたとはいえ、これはどう考えても役得というよりもグレーゾーンである。(笑)そのとき、古いハワイアンシャツは古着屋で買えば良いということをだれかが教えてくれた。そこから、ワタシの古着屋めぐりがはじまる。
1980年代は古着がファッションになり、お店も一気に増えていくような“古着屋勃興”の時代であったように思う。ラブ&ピースや環境意識という時代の気分に背中を押されるように古着はファッションの枠を超えてカルチャーとしてひと時代を築いていった。そんなこんなで古着屋が増えていったおかげで、ワタシのハワイアンシャツ探しはずいぶんラクになり、コレクションに拍車が掛かった。(掛かってしまった?)
仕事関係の先輩である遊びの師匠が「DEPT」という古着屋に関わっていたから、一緒に東京へ出張したらその店へ遊びにいったりしていた。そのひとに連れられていくだけでなくだんだん単独行も増えていく。キタ、ミナミ、神戸の高架下、渋谷、原宿、ハワイ、サンフランシスコ…。旅行や出張の機会に古着屋やフリーマーケットをめぐる楽しみもできた。いま持っているハワイアンシャツのほぼすべては古着屋で買ったものだ。あるいは、一部が誰かからのいただきものだ。だから、どこでどんなふうに出会い、どうやって手に入れたか。一着一着に思い出という名のストーリーがある。ワタシ以前に所有していたひとのストーリーまではわからないが、ワタシが手にした瞬間のストーリーはすべてのシャツにある。新たな所有者とともに歩むセカンドストーリー。それが古いものを所有するコレクションライフの第一の楽しみだろう。
そしてある程度数が増えていくと生地や柄、ボタンや織りネーム、ブランドの由来などに興味がひかれるようになっていく。そして、知りたくなる。それが、コレクションライフの第二の楽しみだ。
ずっと眺めていたい本。
シャツが増えると本も増えていった。文中に紹介した「The Hawaiian Shirt」、「HAWAIIAN SHIRTS」以外にもこんな本を持っている。じぶんが持っているシャツのブランドストーリーや、ボタンやシャツラベルなどのディティールを知るとそのシャツへの愛着も増していった。
そんなときに出会ったのがその名も「The Hawaiian Shirt」という一冊だ。買ったのはたしかハワイの本屋さんだったと思う。全面ヨダレが出そうなほどステキなハワイアンシャツがいくつも紹介されている。買ったその日から、くる日もくる日もページをめくって「こんなの欲しい」と飽きもせずに眺めていた。好きだからこそなんだけど、眺めていても飽きない本は「愛犬図鑑」とこの本くらいだろう。(じつは犬も好きである。愛犬図鑑はずーっと愛読書だ)
この「The Hawaiian Shirt」という本はヨチヨチ歩きのワタシの英語力でも読める箇所もあるので、そのうちにハワイアンシャツの知識も増えていった。“Google先生”に質問すればたいがいのことに答えてくれるが、英語の本から少しだけ苦労して学ぶのも楽しいものだ。いまなら“Google翻訳(カメラ)”というものがあるので、簡単に訳せてしまうので、あっけなくて楽しみが薄れてきているように思う。やっぱり、集めたり、知ったりっていうのは苦労しないとね。そして、ずーっと眺めていたくなるような関連本と出会うことも大切だ。
好きなひとのことはなんでも知りたい。
ハワイアンシャツと並行してハワイアンシャツの本も集まってきた。それらには珍しいヴィンテージもののシャツがたくさん載っているだけではなく、古いシャツのラベルを集めたページがあったり、ボタンの種類を解説したページがあったりする。じぶんが持っているシャツのラベルやボタンを調べるだけでなく、持っていないものを見つけて記憶して次に買うモチベーションになっていくことも多々あるものである。
これらの本はシャツの柄ごとに分類されているケースが多く、じぶんの持っているシャツが「BORDER」、「PICTURE」、「JAPANEASE」、「TAPA(タヒチ伝統の樹皮布)」、「FLORAL」「FULA」、「HAWAIAN MOTIF」、「HOLIZONTAL PATTERN」などであることもわかっていく。そうなってくると、さらに楽しみが増えていく。好きなひとのことって、やっぱりいろんなことを知っていたいじゃないですか!あの気持ちと一緒なんです。
本の中にじぶんが持っているシャツと同じものを見つけるのは何よりの楽しみ。本に掲載されているということは由緒ある柄であり、正統のブランドということだ。上は「DUKE KAHANAMOKU」という伝説のサーファーの名前を冠したヴィンテージブランド。「BORDER」という柄の分類されている。下も同じく「DUKE KAHANAMOKU」。こちらはヤシの木が縦方向に描かれた「HORIZONTAL PATTREN」。こちらもヴィンテージものだ。
好きと宣言してしまう。
コレクションの大半は古着屋で買ったものか、ひとからのいただきものであると書いた。お酒が好きなひとにはお酒が集まってくるように、日ごろよくハワイアンシャツを着ていたり、ハワイアンシャツが好きだと公言していると、ハワイやバリなどのお土産にもらったり(個人的にはハワイ以外のものは邪道だけど)、以前に買ったものだけどもう着なくなったからなんて理由でお下がりしてもらうこともある。
シャツだけでなく献本されることもある。前述した「The Hawaiian Shirt」という本は表紙の色違いで2冊持っている。ピンクのものはじぶんがハワイで買ったもの。黄色いのは同業の東京の友人が事務所を片付けて不要になったのでぜひもらって欲しいとわざわざ送ってきてくれた。「HAWAIAN SHIRTS」という本はオアフ島出身の懇意の大学教授から里帰りのお土産にいただいた。ワタシがハワイアンシャツを好きでコレクションしていると知ってからは、帰られたときにときどき古着を買ってきてくださる。それでわかったのは、ワタシのようなハワイアンシャツ好きと。ロコである先生とは根本的に好みが違うということだ。先生が買ってきてくれるのは「TAPA」だったり「POLYNESIAN」だったり古来の柄が多い。ワタシが好きなのはサファー好みな柄なんだと思う。
こうやってハワイアンシャツ好きを公言することで、ワタシのとことろに好きなものが引き寄せられてくるのなら、“お金が好きだ”“ロレックスが好きだ”と公言してみようかしら。まさか、そんなものが集まってくるわけはないとは思うが。
コレクションすることによって、集める以外の新たな楽しみも広がる。コレクションの第二の楽しみは第一の楽しみをさらに深めてくれるのだ。
では、このへんで、ALOHA!
(なるのだ編集室 田中有史)