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2022.11.02
売場ニュース
「RELAX &RESET〜上質な眠りと癒しのフロア〜」をテーマにリニューアルされた神戸阪急新館7・8階。「上質な眠り」を担う7階のメインエリアBEDROOM CRAFTには選び抜かれた寝具で快眠を体験できる「ORDER BEDROOM」が備えられており、ベッドの周りをぐるりと遮光カーテンで囲めば、まるで夜の寝室のような空間が作り出されます。また、このコーナーには、マットレスや布団、枕といった寝具だけではなく、バスグッズ、パジャマ、スキンケアアイテムなど、寝室に向かう前から翌日の朝を迎えるまで、眠りに関わる時間にトータルで寄り添うさまざまなアイテムが集められています。
百貨店という場所で、なぜここまで「眠り」にこだわった売り場が作られているのか。「寝室から暮らしを考える」というコンセプトでBEDROOM CRAFTをプロデュースする株式会社NIPPON LIFE STYLEの松本さんとウエダさん、コーディネーターとして関わる吉田さんに伺いました。
松本良平
株式会社NIPPON LIFE STYLE代表取締役
ウエダカズヤ
株式会社NIPPON LIFE STYLEマーケティング部部長/BEDROOM CRAFTブランドディレクター
吉田豊子
コーディネーター
自分にとっての「上質な眠り」を体験して選べる場に。
夜の寝室のような空間で、実際に寝具を体験することができます。
もともとは輸入代理店で働き、そのなかで海外の寝具を国内メーカーに納める仕事をしていたという松本さん。自身の経験から、海外の寝具をそのまま持ってくるのではなく、日本人の寝室環境や眠りの習慣に合わせた提案をする必要があると考えています。
「日本人は仕事や通勤にかける時間が長く、OECD加盟国のなかでも睡眠時間が最も短いと言われています。また、ついこのあいだまで畳の生活をしてきたこともあり、寝室環境の改善のためにベッドをご提案しても、住宅事情や長年の生活習慣を変えたくないという考えが壁になって、なかなか受け入れてもらえないこともあります」
だからこそ、体験してもらうことが大切だと松本さんは考えています。
「ただ商品を勧めるのではなく、カルテを用いて現在の寝室や生活習慣を詳細にお聞きしながら、ご提案していきます。この売り場に来ていただくことが、これまでの睡眠に対する意識を変えていくきっかけになればと思っています。売り場に寝室を疑似体験できる場所を用意したのも、体験し、納得していただくことを重視したから。眠りについてはいろんな研究がありますが、まだまだ解明されていないことも多く、正解はありません。ご自分に合うものをご自身で選んでもらうことが大事だと思っています」
「眠り」には、一つの正解があるわけではなく、一人ひとりの寝室環境や生活習慣、考え方といった「暮らし」と深く結びついていると言えるようです。では、BEDROOM CRAFTの「寝室から暮らしを考える」というコンセプトは、どのような考え方に基づいているのでしょうか。
眠りを考えることは暮らしを考えること。
世の中が便利になったことで、仕事も趣味も24時間いつでもできてしまう現代。「眠り」を考えることの重要性が高まっているとブランドディレクターのウエダさんは考えています。
ウエダさん自身は、広告業界出身。毎日終電近くまで仕事し、徹夜することも日常茶飯事だったとか。20代で自律神経に不調が起き、ドクターストップがかかったこともあったといいます。
BEDROOM CRAFTの「寝室から暮らしを考える」というコンセプトは、そんな経験をお持ちのウエダさん自身の住まいへの考えから生まれています。
「家づくりにおいて日本では多くの場合、家族が集まるリビングを中心に考えられていて、寝室は優先度が低く、住宅事情から日当たりの悪い場所を選んでしまいがち。ただ、子どもが寝静まってから帰宅する生活が続いていた私にとって、家族ともっとも長く過ごせるのは寝室でした。家族がぐっすり眠る寝顔を見て眠りにつき、ともに朝を迎える。そうした生活のなかで、家族との時間を素敵にする寝室にしたいという思いが芽生えてきました」
ブランドコンセプトを考えるうえで、欧米の家づくりにも目を向けたウエダさん。欧米ではリビングは公的な場所、寝室はプライベートな大切な場所として考えられていて、朝日がもっとも気持ちよく入る場所を夫婦の主寝室に選ぶなど、寝室を中心とした家づくりという価値観を知ることができたといいます。
「では、私自身が、家族とどんな暮らしをしたいか、どんな寝室で過ごしたいかということを考えたとき古き良き、日本の原風景のような情景を思い浮かべたんです。家族が川の字になって一緒に寝ているような。いまでは家族4人、家のなかで一番広い部屋を寝室にして、ベッドを4つ並べて川の字のように寝ています」
多様な暮らしがある現代では、家族の数だけリビングのスタイルがあるように、家族の数だけ寝室のスタイルがある。だからBEDROOM CRAFTの「寝室から暮らしを考える」というコンセプトには、寝室を通して暮らしへの多様な思いを形にしていくことで、自分自身や家族との暮らしを大切にしたいと考えたウエダさんの思いが託されています。
一日の終わりはパジャマに着替えて、眠りを楽しみにしてほしい。
売り場には、寝具以外にも、眠りに関わる時間にトータルで寄り添うアイテムが集められています。
また、眠りは寝室に向かう前から始まっているという考えのもと、BEDROOM CRAFTには、寝具以外にパジャマやバスグッズなどのアイテムも揃えられています。コーディネーターの吉田さんは、長年、女性用下着のメーカーでパジャマについて研究してきました。
「パジャマって追求すると面白いんです。寝返りをさまたげない構造、汗を吸うという機能はもちろん大事ですが、眠りのために服を着替えること自体の意味も大きいんです」
部屋着のTシャツやスウェットのままでも、眠ることはできる。けれど、パジャマに着替えたときの気持ちの変化は眠りの価値を上げてくれると吉田さんは言います。
「たとえば休日にずっと家で過ごして、汚れてないからお風呂も入らずにそのまま寝てしまおうとしても、うまく眠れないと思うんです。お風呂であったまって、スキンケアをし、パジャマに着替えることで気持ちの上でも眠る準備ができていきます。一日の終わりはパジャマに着替えて、眠ることを楽しみにしてほしいと思っています」
コロナ禍になって、「眠れない」という悩みが増えたとも話す吉田さん。
「テレワークが普及し、起きた時の格好のままで仕事ができてしまう。オンとオフがダラダラっとつながってしまいやすいのですが、それは眠りにとってはよくないんです」
オンとオフの区別がつきにくくなっている最近の私たちにとって、「眠りを楽しみにすること」の意味はますます大きくなってきていることが、吉田さんのお話からも伝わってきます。
百貨店だからこそ考える「眠り」。
暮らしに豊かさと彩りを添える百貨店という場所だからこそ、自分自身がどんな暮らしをしたいかを考えながら眠りを考えることができるのではないか。お三方のお話しを聞きながら、そう感じました。
さまざまな研究により、眠りは心身の回復だけでなく、記憶力や免疫システムにも関わっていることがわかってきています。ただ、眠りはそういった「効果」だけで語るのではなく、もっと豊かで楽しいものではないでしょうか。
暮らしを楽しみ、自分自身や家族をいつくしむこと。一日をゆったりと終え、また新しい一日を始めていくこと。海と山に囲まれ、都市と自然が隣り合うように存在している神戸という土地だからこそ、「眠り」や「寝室」を大切にし、次の日をすっきりと迎えることが、神戸という街で暮らすことの価値をより高めてくれるのかもしれません。
(なるのだ編集室 山本しのぶ)