[「なるのだ。」の舞台裏] [Time of "Grace" 本館4階] [ファッション] [メゾンドキモノ]
2023.04.19
売場ニュース
着物といえば、冠婚葬祭のための特別な衣服と思われがちな現代。「呉服店に足を踏み入れるのは敷居が高くて……」と尻込みをする方も多いかもしれません。でも着物って、本当はもっと自由に、おしゃれの表現のひとつとして楽しめるもののはず。そんな神戸阪急の思いを詰め込んで、まもなく新装オープンを迎える4階「メゾン・ド・キモノ」コーナー。その一角に登場するのが、着物ファッショニスタの熱い支持を集める大塚呉服店です。大塚呉服店と神戸阪急が取り組む、これまでの呉服売り場のイメージを塗りかえていくトライアル、ちょっと覗いてみませんか。
着たい着物を自分で選ベる。そんな時代にふさわしいお店を
廃業されたお豆腐屋さんの建物を、思いがけないご縁で受け継いでお店に。古いタイルなどをそのまま残したレトロモダンな雰囲気が魅力。
京都・八坂神社に近い、石畳の路地に佇むギャラリーのような空間に、モダンでポップな着物や帯が並ぶ大塚呉服店。この日私たちを迎えてくださったのは、代表を務める大塚直人さん。「きものが着たくなる呉服店」をコンセプトに掲げ、ここにショップを構えて今年で丸10年になります。とはいえ、それ以前にも着物と向き合ってきた歴史は浅くはありません。
大塚呉服店という新しい業態の立ち上げからディレクションを担ってきた大塚。
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「元々、兵庫県の揖保郡で親戚が呉服店をやっていまして、そこから独立する形で父が昭和48年に会社を創業しました。ですから長らく地元密着で、親子3代にわたるお付き合いというお客様も多かったんですよ。」 |
好景気の時代には、いわゆる嫁入り支度やセレモニー向けに、有名作家が手がける工芸品のような着物が次々と売れたこともありました。そういったものを数多く扱ってきた経験があるだけに、高級呉服の目利きは確かなものですが、やはり和装離れという時代の流れは、抗いようのないものでした。
そんな中で代表に就任した大塚さんが立ち上げたのが、冠婚葬祭の着物ではなく、自由に楽しむファッションとしての着物に舵を切った、新業態の「大塚呉服店」。これまでのような地域密着型呉服店とは異なる、セレクトショップのような広く開かれた場です。
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「インターネットやSNSが発達して、ユーザーが自分の着たい着物を、買う場所も含めて自分で探して選べる時代になったことは大きいですね。お仕立て上がりを多く扱っているのも、オーダーメイドの着物は価格がわかりにいくいというイメージを覆してシンプルにしたかったからなんです。」 |
いわゆるドレスのような正絹着物だけでなく、ポリエステルや木綿、デニムなど、都会に映えるワンピース感覚のカジュアル着物を多く取り揃えた大塚呉服店。たちまち「こんなふうに着物を着られたら」と感じていた女性たちの心を掴みました。
呉服売り場を、ファッションフロアに溶け込ませる!
一方で「神戸の暮らしに寄り添う百貨店」を目指す神戸阪急にとっても、これからの呉服売り場をどう考えるかは重大なテーマでした。今から1年前、「呉服売り場をファッションフロアに溶け込ませる」というミッションに取り組むことになったのは、4階フロア担当のディヴィジョンマネージャー北川をはじめ、呉服プロジェクト担当の乾、今井らのチーム。
これまで長年、婦人服畑ひと筋で、着物に関わるのは初めてという乾(右)と、呉服売り場勤務7年の経験を持ち、プライベートでも大塚呉服店のファンだったという今井(左)。
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「最初に改修プランを見た時、なぜ4階ファッションフロアに呉服売り場が?って驚きましたね。呉服売り場って大抵、上層階の奥まったところにあるじゃないですか。でもそれをあえて神戸山の手の華やかな暮らしをイメージした4階に持ってきて、“自由に楽しむファッションとしての着物”を提案することが私たちの役目だ、と。では、そのコンセプトを発信していくために、どこにお声がけをすればいいのか、社内の女性たちに聞いてみたところ、真っ先に上がってきたのが大塚呉服店さんのお名前でした。」 |
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「私も以前から大塚呉服店さんのファンなんです。いつもファッション感覚でセンスのいいものを置かれているので、自分でも“着てみたい!”って思うものに出会えることが多かったんですよね。ですから大塚呉服店さんにご出店いただけると知った時はすごくうれしかったです。」 |
「Time of Grace」を掲げ、売り場づくりを統括する北川。
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「こちらのスタッフさんは、若い感性でトレンドをしっかり押さえつつも、皆さん着物愛に溢れていて、親しみやすさとお客さまとの絶妙な距離感を保った接客が素晴らしい。その笑顔や感性も、4階にいい空気感をもたらしてくれると思いました。」 |
4階「メゾン・ド・キモノ」のコーナーには4つの呉服店が並び、人生の節目にまとう特別な着物から、日常を楽しむ着物まで揃います。
そんな熱い期待を受け止めた大塚さん。かねてより温めていた構想を、神戸阪急チームに持ちかけました。そこには、着物の販売だけでなくレンタルも行うことや、神戸阪急が扱う「百貨」をからめて、着物を楽しむ時間をトータルコーディネートするというアイデアも含まれていたのです。
神戸阪急の「百貨」を散りばめて、着物で過ごす時間を自由に楽しく
神戸阪急が扱う「百貨」を着物にからめていけば、どんな楽しみが広がるでしょう。たとえば、お呼ばれしたパーティーのテーマに合わせて着物を着たい時。大塚呉服店スタッフに着物スタイリングから着付けまでお願いできるだけでなく、他フロアと連携して、メイクアップや手土産スイーツ、ブーケの手はずを整えてしまうことだって可能に(註:事前予約が必要です)。和洋折衷コーディネートで、着物に合うブーツを靴売り場から見つけてきたり、洋服売り場にあるショールや帽子を着物に合わせたり、という提案も広がります。
神戸阪急の4階で「なりたい着物美人」に変身して街に繰り出し、思い思いに楽しい時を過ごしてみる。そんなファーストステップを味わったその先で、「これからも着物はレンタルでいいわ」と割り切るならそれもよし。一方で、もっと着物を知りたい、楽しみたい、という思いが芽生えた方には、次のステップとして「マイ着物を買ってみる」ことも全力で応援。そんなお店が大塚さんの目指すところです。
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「着物に対する固定概念を取り払って、もっと自由に楽しんでいただきたいですね。先日も、“成人式の振袖はダサいから着たくない”とおっしゃるお嬢さまに、うちが秘蔵しているアンティーク振袖をお見せしたら、“こんなハジけた着物なら着てみたい!”と目の色が変わった、なんてこともありました。ですから神戸阪急さんでは、京都店でこれまで主力にしてきたお仕立て上がりのカジュアル着物だけでなく、正絹の反物からお仕立てするものや、アンティーク着物なんかも含めて、幅広くご提案できるようにしようと思っています。それに着物って、季節の移ろいを取り入れて楽しむのも魅力のひとつですから、売り場のディスプレイもしょっちゅうコロコロ変えることになりそうです。百貨店って、店頭企画にも使用する什器にも何かと制約があって、こんなに自由にやらせていただけることはまずないと思うんですが、その点、神戸阪急さんは相当特殊ですよ(笑)。」 |
お母さまやお祖母さまが着ていた着物を活かしたい時は、全身お下がりでなく、どこかに現代ものを合わせると垢抜けスタイリングに。そんな提案もお得意です。
まず呉服売り場に足を運び、着物に触れること自体をエンターテイメントにしたい。そのひとときの体験が、着物の魅力を発見するきっかけになってくれたら。大塚さんのそんな思いが伝わってきます。
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「今の時代、ネットショップからフリマアプリまで、あらゆる選択肢がある中で、ただおしゃれなものを集めて並べておくだけでは、わざわざお店に足を運んでいただける理由にはなりづらいですよね。いかにして神戸阪急さんに来ないと体験できないものをご提供できるか、をずっと考えています。」 |
帯留めひとつでも気軽に買いに立ち寄れるのが、大塚呉服店らしさ。
美しいものが好き。心華やぐエレガントな時間が好き。そんな気持ちを体現する4階フロアで、「神戸らしい着物ライフ」のランドマークとなるべく準備を進める「メゾン・ド・キモノ」と大塚呉服店。4月26日のオープンまで、あともう少しです。
後篇では、大塚呉服店が「神戸の街で着物を楽しむなら」をテーマにスタイリングした着物着こなし集を公開!あなたのおしゃれ心に響くヒントが、見つかりますように。
(なるのだ編集室 松本幸)
「きものを着たくなる呉服店」をコンセプトに、自由にファッションとして楽しむ着物を提案。神戸阪急で展開する新しいショップでは、販売だけでなくレンタルも含めて、カジュアルなものからドレッシーなものまで幅広い着物のおしゃれをお届けします。