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2023.10.10
売場ニュース
「Feel the Wind」をテーマに、海と山を感じる暮らしを提案する神戸阪急本館6階。ここに誕生する「瀬戸内ライフ」ゾーンでは、神戸を起点に瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島々、その先にある四国を旅したくなるような、瀬戸内エリアの魅力を発信していきます。
今回が県外初出店となる「まちのシューレ963」は、香川県高松市に本店があるライフスタイルショップ。香川と周辺地域のものを中心に、暮らしの中にあるとうれしい「ちょっといいモノ」を集めた品揃えで人気のお店です。10月の「まちのシューレKOBE」の売り場オープンに先立ち、6階フロア担当の佐藤がRerere編集部とともに高松へ行き、ここで提案されている暮らしのヒントを一足先に覗いてきました。
香川に新しい風を吹き込んだ、先進的なライフスタイルショップ
美しく生まれ変わった高松の商店街に店を構える「まちのシューレ963」。
JR高松駅から15分ほど歩いたところにある、ガラス張りの高いアーケードが印象的な高松丸亀町商店街。この中に、「まちのシューレ963」はあります。江戸時代から商店が立ち並んでいたこのエリアは時代とともにシャッター街になりつつあったものの、大規模な再開発により14年前に明るくきれいな商店街に生まれ変わったのだそう。教えてくださったのは、「まちのシューレ963」の店長を務める谷真琴さんです。
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商店街のリニューアルに伴い県外からもお客様を迎えようと、地場のものを取り扱うお店として「まちのシューレ963」は生まれました。 |
プロデュースしたのは、幼少期を香川で過ごしたという、奈良で人気のカフェ&雑貨のお店「くるみの木」のオーナー・石村由紀子さん。香川の生産者や作家によって製作されたものを集め、「くるみの木」と同様にカフェを併設したライフスタイルショップとしてオープンした「まちのシューレ963」は、新しくなった商店街の中でもひときわ先進的な雰囲気を放っていたといいます。
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2010年のオープン当時は、こうした提案型のライフスタイルショップは全国的にも先駆け的存在。地元の人も県外の人も、珍しがって見に来てくれました。ただ、香川はうどん一杯が300円で食べられるまち。どんなにクオリティにこだわっていても、私たちが提案する商品や1000円以上するランチは、なかなか受け入れてもらえませんでしたね(笑)。 |
オープン当時の苦労を語る店長の谷。
それでも続けていくうちに、商品の価値や、手間ひまかけているからこそのおいしさを理解するお客様が徐々に増えていきました。2010年に瀬戸内国際芸術祭が始まり香川がアートのまちとして知られるようになったことや、インバウンドの影響など、時代の後押しもあって、「まちのシューレ963」は県外・海外からも人が訪れるお店となり、この地に浸透していったのです。
なければつくる!「暮らしの中にあるとうれしいモノ」を提案
店舗は建物の2階にありながら、周りにはオリーブの木をはじめとする植物がたくさん置かれていて、瀬戸内らしい自然を感じることができます。ガラスや木や石を多用した店内は視界が明るく、まるで風が通り抜けるかのよう。
調味料、お菓子、お酒などの食品、ユニセックスの衣類やアクセサリー、さらしやふきんなどの生活雑貨、香川の伝統工芸品、作家の陶器やアート作品を展示するギャラリースペースなど、広い空間にゆったりと配置された各コーナーを気の向くままに見て回ることができます。
余白を活かした回遊式の広い店内。
そんな「まちのシューレ963」が大切にしているのは、「単に地場のものを扱う『おみやげもの屋』ではなく、手にした人が心ときめいたり、暮らしに取り入れたくなるようなものを提案するお店であること。
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たとえば香川で嫁入りのときに挨拶代わりに配る「おいり」というお菓子は、カラフルで可愛いうえに米粉由来でお子さまのいるご家庭にも人気。香川の名産品の一つ和三盆の干菓子もチョコレートが入っているものだったり、和菓子では季節のフルーツが入った羊羹など、一風変わったものを揃えています。素麺もよくある透明の袋や桐箱に入ったものではなく、うちで扱っているのはクラフトのおしゃれなパッケージのもの。そんなちょっとしたこだわりが、暮らしに楽しさをプラスしてくれると思うんです。 |
(左)香川の嫁入り菓子「おいり」。(右)クラフトのパッケージが好評の素麺。
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私も「おいり」が大好きなので、ここにあるのを見てうれしくなりました(笑)。食品に限らず「まちのシューレ963」さんの商品は伝統的なものでもどこか目新しさが感じられて、思わず手に取りたくなるものが多いですよね。それが、今回神戸への出店をお声がけした理由でもあります。 |
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昔からあっておいしいんだけどパッケージがいまいち……という場合は、スタッフがラベルを手作りすることもあります。世の中にはまだないけど、「暮らしにこんなものがあればいいのに」と思えば、商品自体をつくってしまうこともあるんですよ。 |
一例を挙げると、県産木で職人がつくる「木のフレーム」は、香川出身の画家・猪熊弦一郎の絵を美しく飾りたいという想いから生まれたオリジナル商品。お茶文化が残る香川の日本茶をもっとカジュアルに楽しみたいという発想から、お茶の老舗と一緒につくったオリジナルのブレンドティーも販売しています。
県産木の繊細な木目を活かした「木のフレーム」。
日本茶とハーブをブレンドしたオリジナルティー。
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本当に、暮らしが楽しくなるヒントがいっぱいですね。「あったらいいのに」と思ったらつくってしまうフットワークの軽さは、「百貨店では無理」と諦めずわれわれも見習うべきだと感じました。 |
「百貨店でもめざしたいヒントがいっぱい」と話す佐藤。
背景にストーリーのあるモノが、暮らしを豊かにしてくれる
「まちのシューレ963」では、つくり手の想いやこだわりが感じられるものも多く取り扱っています。
「讃岐かがり手まり」もその一つです。「讃岐三白(さんぱく)」といって木綿・塩・砂糖をつくっていた歴史がある香川で、草木染めした木綿糸でつくられている手まりは、やわらかな色合いが特徴。今も保存会の方々が一点一点心を込めて製作しています。
漆塗りの箸や皿は、香川の伝統工芸品である漆器に、庵治(あじ)地方でとれる「庵治石」の粉を混ぜた「石粉塗り」という技術を使って、傷がつきにくいよう工夫した逸品。
新しいところでは、庵治石でつくられたドアストッパーやブックエンドなどユニークなプロダクトもあります。これは、もともと墓石や灯籠に使われていた高級石材の庵治石を、もっと多くの人に知ってほしいと産地の職人たちが始めたプロジェクトで、近年は海外からも注目を集めています。
優しい風合いが魅力の「讃岐かがり手まり」。
庵治石でつくられたブックエンドとドアストッパー。
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こんなふうに商品の背景にあるストーリーをお伝えするのも、私たちが大切にしていることです。つくり手の想いや細やかな気遣いが感じられると、「モノ」にも魂が宿って見えます。「高級だから」とかではなく、そういう「モノ」こそ暮らしを豊かにしてくれると私たちは考えているのです。 |
そう語る谷さんの口からは、とめどなく商品の魅力を伝える言葉があふれ出します。
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うちでは私を含め、ふだん接客をしているスタッフが買い付けを行っていて、自分たちが惚れ込んだもの、お客様に勧めたいと思ったものを集めているので、つい熱く語っちゃうんですよね(笑)。それに、店名の「シューレ」は、ドイツ語で「学びの場」という意味なんです。スタッフはみんな知識欲旺盛で、「これはどうやって生まれたの?」「なんでこんなにおいしいの?」と思ったら、実際に生産者の元へ話を聞きに行ってとことん深掘りします。そうして得た知識をお客様に伝えることで、えらそうないい方ですが、暮らしの楽しみ方を一緒に学んでいただく場でありたいと願っています。神戸の人たちともたくさん対話して、共に学べたらうれしいです。 |
「商品の魅力を語り始めると止まらない」という谷。
神戸阪急の売り場では、「暮らしにあるとうれしいモノ」というコンセプトはそのままに、本店では扱っていないブランドや作家の商品も展開するとのこと。店舗デザインは、香川でおしゃれスポットとして話題の仏生山のまちづくりを手がけた建築家に依頼。「瀬戸内の雰囲気を感じてもらいつつ、新しい感性を反映した空間で、私たちも本店とはまた違った側面を見せていきたい」と、谷さんは目を輝かせます。
「今までにない百貨店をつくりたい」という神戸阪急と、「常に新しさを感じてもらえるショップでありたい」という「まちのシューレKOBE」。海と山を感じる6階のフロアを訪れたら、まだ知らない瀬戸内の魅力に出合えるかもしれません。
つくり手の想いが感じられるモノや、「生活の中にあったら素敵だな」と思うモノを取り揃え、暮らしを楽しく豊かにすることを提案する香川発のライフスタイルショップ。衣食住から瀬戸内の伝統工芸品まで、古き良きものと現代的感性がバランスよく融合した、感度の高い品揃えにご注目ください。
(なるのだ編集部 成田知子)