売場ニュース

私が私らしくいられるのは、ほかのどこでもない、この街なんです。

◎インスタグラマー・ウラリエさん

神戸の魅力を発信するインスタグラマーとして、そしてラジオやテレビのパーソナリティとしてファンに親しまれているウラリエさん。震災後、復興を遂げてゆく神戸とともに成長し、青春を過ごした世代です。ブログを始めた10代の頃からブロガー事務所に所属し、「仕事をするなら東京の方が……」と言われ続けてなお、ウラリエさんが神戸を離れられなかった理由とは?筋金入りの神戸ガールのホンネ、聞いてみましょう。

親ゆずりの「おいしいもの好き」を育んだ、懐かしのあの店この店。

私、生まれも育ちも中央区なんです。生まれてから小学校時代まで住んでいた家は、湊川神社の近くでした。震災の時は、私はまだ幼稚園の年長さんで、当時の記憶は残ってないんですが、両親の話では、食器棚が倒れて中身が飛び出し、部屋の中はぐちゃぐちゃだったそうです。

さいわい家は無事だったんですけど、ライフラインも途絶えていたし、しばらくは姫路に住む親戚の家に、家族で避難させてもらっていました。私の下には生まれたばかりの弟もいましたから、両親の不安は相当なものだったと思います。でもそのあとしばらくして、春にはまた神戸に戻って小学校の入学式に参加できたんです。みんな精一杯、日常に戻ろうと努力してたんですね。

子どもの頃の思い出の場所といえば、やっぱり湊川神社かな。初詣や七五三、お祭りと、何かにつけて楠公さんに行ってました。お正月は親戚一同集まって、楠公さんで初詣してから、楠公会館でごはんを食べるのが恒例でした。それに私、今でも毎月のように楠公さんへ「おついたち参り」に通ってるんですよ。

うちの家族は昔から食べることが大好きで、外食もしょっちゅうでした。父はお米屋さんをしていて、いろんな飲食店にお米を納入していたので、定期的にお得意さまのお店に、挨拶回りを兼ねて家族で食事に行ってたんです。個人経営のお店からホテルのレストランまで、子どもの頃から本当にいろんなところに連れていってもらいました。だから家族の思い出とリンクしてるお店がいっぱいありますね。神戸っておいしいお店が多いじゃないですか。外食が充実しすぎちゃって、私いまだに料理ができないんです(笑)。

「元町や三宮は自分たちの庭」、そう思っていた青春時代。

中学高校の6年間は、六甲山のふもとにある女子校に通っていて、これまた中央区。だから、しょっちゅう学校の友だちと南京町で食べ歩きしたり、三宮でカラオケしたりプリクラ撮ったり、してました(笑)。「元町や三宮が自分たちの庭」という気分でいましたね。ちなみに高校時代の私は完全にガングロギャル。ちょうどその頃って、ケータイで個人ホームページをつくるのが高校生のあいだで流行ってたんですよね。私はミーハーで流行りには真っ先に乗っかるタイプだから、自分でもホームページ立ち上げて、その流れで日記的なブログも発信するようになったんです。

ただ、最初の頃はどっちかというと「私を見て!」という感じで、自撮りやメイク、ネイルとかファッションの発信が中心でした。年齢を重ねていくうちに、だんだん自分メインではなく、自分が見つけたおすすめスポットを紹介する内容になっていったんですけど、まだ神戸にそこまで思い入れもなくて、今の発信内容とは全然違ってましたね。

2011年当時のご自身の身辺日記的インスタグラムを見返すウラリエさん。スマホにたくさんぶらさがるチャームを指して、「心はいまだにギャルのままなんです」と笑います。

「神戸のこと、もっと知りたい!」コロナ禍で生まれた心境の変化。

神戸との向き合い方が明らかに変わったのは、コロナ禍からです。県をまたいだ移動ができなくなって、仕事もストップ。そんな状況になって改めて地元に目を向けるようになったんです。そうすると、今まで「自分の庭」みたいに思ってた街にも、まだまだ知らない素敵なお店やスポットがいっぱいあるって気づいたし、この街が好きだっていう思いも強くなっていったんです。

あの時は外出自粛ムードが広がって、飲食店さんはどこも大変だったじゃないですか。そんな中、テイクアウトでがんばってるお店を応援したくて、そういうお店情報をまとめてインスタグラムにアップしたりしてました。いろんな飲食店さんに足しげく通って、話を聞いて、お店の人とのコミュニケーションがすごく深まった時期でもありました。

それまでは、私の発信を見てくださってたのは圧倒的に同世代の女性でした。でも発信内容が完全に「神戸推し」になってからは、フォロワーさんの幅が広がって、私たちの親世代の方とか男性もすごく増えたんですよね。そうすると、私の知らない素敵スポットをフォロワーさんから教えていただくことも増えて、それに反応して私も「行ってみたい!」って好奇心が湧いて……。そんなふうに皆さんとキャッチボールしながら、神戸の魅力を再発見していった感じですね。

神戸の魅力って、結局「人」なんだと思う。

最近は、あそこで桜が咲いてたよとか、そろそろ紅葉が始まってたよとか、そういう季節の移り変わりをフォロワーさんと共有できるのが楽しくて。路地を歩いてるだけでも発見があるし、海山の自然もすごく身近で、ほんと飽きないですよね。このコンパクトな街のサイズ感の中で、いろいろ楽しめるのは、神戸ならではだと思います。

将来はもう少し郊外で、古民家をリノベーションしたおうちにも住んでみたい。神戸って都会のイメージを持たれがちだけど、ちょっと足を伸ばすとそういうのんびりした場所がたくさんありますもんね。

でも突き詰めると、神戸の魅力って結局、人だなって思うんですよ。素敵だなと思う場所には、必ず素敵な人がいて、そういう人たちと話したり時間を共有した思い出が積もって、ひとつひとつの場所が自分にとって特別な存在になっていく、というか。神戸の人って、みんな神戸愛は熱いけど、どこか肩の力が抜けてて、それも居心地いいのかもしれません。知り合いをたどればみんな友だち、みたいな「ホーム感」があるのもいいですよね。

若い頃は「神戸を出たい」って思ったこともありましたよ。でも結局、居心地がよくて離れられなかったし、これからもきっとそうだと思います。今は仕事で他府県に行くこともあって、行く先々でそれぞれの土地の魅力を感じて、いいなあと思うんですけど、やっぱり帰ってくるとホッとするし、「神戸がいちばん!」って思いますね。


PROFILE

ウラリエ



1988年神戸生まれ。学生時代からホームページ・ブログ・SNS等で情報発信。現在はフォロワー8万7千人のInstagramをメインに活動。最近ではテレビやラジオ、雑誌などのメディアにも進出。2023年4月からラジオ関西「Clip」金曜レギュラー。