テムズ川のボートレース「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」(前編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

7月は、英国の夏の風物詩 テムズ川のボートレース「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」について。

英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話しいただきます。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!


‟テムズ川の水面を2隻のボートが直線を追うように疾走し、川辺ではシャンパングラスを片手に派手なブレザーを着た人たちが声援を送っている…”
そんなイメージのヘンリー・ロイヤル・レガッタのボートレース。
英国人に自ら「英国的!」と言わせるこのボート競技大会は、エリザベス女王をパトロン(後援者)とし、ウィンブルドンのテニストーナメント、ロイヤル・アスコット、全英ゴルフ大会と並んで夏の風物詩の一つとなっています。

会場となるヘンリー・オン・テムズは、ロンドンから西に60Kmほど離れた、チルタンの丘陵を背景に佇む美しい町です。
17・18世紀はガラス製造や羊毛の取引で栄え、付近で伐採された木や穀物がテムズ川を通してロンドンに輸送されました。

この町で初めてボート競技が行われたのは1829年。
設立されて間もないケンブリッジ大学のボートクラブが、歴史あるオックスフォード大学に挑戦を挑んだのでした。
これが現在も続くケンブリッジ大学とオックスフォード大学の対抗ボートレースの始まりであり、2万人の人たちを惹きつける大イベントとなったのです。
写真上:チームを応援する合間に談話を楽しむ。
写真下:所属するボートクラブのブレザーは彼らの誇り。

その後、オックスフォード大学・ケンブリッジ大学対抗ボートレースは1836年にロンドンに移行しましたが、ヘンリー・オン・テムズでは1839年に町の活性化を目的として、1日だけのボート競技イベントを開催しました。
これが観光客を呼び、町の経済に大いに貢献して大成功。
翌年には2日間のイベントとなり、その後は更に増え続け、現在では6日間にわたる大イベントとなりました。

1851年にヴィクトリア女王の王配がパトロンとなり、それまで「ヘンリー・レガッタ」と呼ばれていたこの大会はロイヤルの名が付け加えられ、「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」とも呼ばれるようになります。以来、全ての君主がこの競技大会のパトロンになっています。

今年は17ヶ国から739名の申し込みがあり、レースも300とこれまでのヘンリー・ロイヤル・レガッタの最高数に達しました。
当初はアマチュア専門の競技でしたが、現在はプロ、オリンピックのゴールド・メダリストなど世界中のトップクラスの選手が出場しています。

さて、私は競技5日目の土曜日(最終日の前日)にヘンリー・ロイヤル・レガッタを訪れました。
一般の人たちが観戦できる場所は3か所あります。(この他、貸し切りの場所があります。)
「レガッタ・エンクロ―ジャー」、「スチュワーズ・エンクロ―ジャー」、そして無料の川辺です。

レースは、テムズ川に設けられた全長2,112mのコースを2隻のボートが競い合い、勝ち抜いて最後に残ったチームがそれぞれのカテゴリーのカップを手にします。
競技者は世界中から集まった大学や名門ボートクラブのメンバーです。
写真上:ストライプや、カラフルなブレザーが特長。
写真下:レガッタ・エンクロージャーのカジュアルなレストランで。


まずレガッタ・エンクロージャーに向かいました。
このエリアは40ポンドの入場料が必要です。
ドレスコードはありませんが、所属するボートクラブがある場合は、そのクラブのブレザー着用を勧められています。

また、食べ物を持ち込むことは禁止されていますので、カフェやレストランで食事をします。
ボートテントには競技に使われるボートとオールが保管されていて、選手たちはそれぞれのボートをここから持ち出して出発点に向かいます。

ダラム大学クラブのブレザーを着た女性とご主人に話を伺いました。
写真上:応援の拍手で迎えられ出発点に向かうダラム大学チームの選手たち
写真下:ボーン夫妻

木島:今日はお知り合いの方が出場されるのですか?
ボーン夫妻:はい、息子が出場します。今日はダブル・スカルズに出ます。
(注:ダブル・スカルズとは、2名の競技者がそれぞれ小さめのオールを2本使って漕ぐ種目)

木島:ヘンリー・ロイヤル・レガッタは時々いらっしゃっていますか?
ボーン夫妻:毎年来ています。英国の伝統、文化が最も深く感じられるイベントだと思いますよ。

木島:(奥様のブレザーを見て)このブレザーはどこのクラブですか?
奥様:これはジョージ(息子さん)が通っているダラム大学ボートクラブのブレザーで、今日はこれからコックスエイトの競技が始まるので、応援に来ました。
(注:コックス・エイトとは、舵を取るコックスを乗せた8人競技)

プログラムを見ると、ジョージさんの競技は10時50分から。
競技の相手はアメリカから出場しているチームです。

ジョージさんは2年前に大学の「スポーツマン賞」に選ばれたということで、さすがでした。
相手チームに大差をつけて勝利!
写真:ゴールまであと200メートルほど。(前の白、赤、黄色のユニフォームがジョージさん)

今年のヘンリー・ロイヤル・レガッタでのカップは逃したものの、2024年のパリオリンピック出場を目指して、更に特訓が待っているようです。

ゴールに一番近いところにあるスチュアーズ・エンクロージャーは、最もエリートな地域です。
ヘンリー・レガッタの会員、及びそのゲストのみが入場できます。
メンバーになるウェイティングリストは現在5~8年待ちと言うことですが、ヘンリー・レガッタの競技に出た人や、レガッタに特別なコネクションのある人は優先されるとか。

中編へつづく…


次回は、一番近いところにあるスチュアーズ・エンクロージャーでのインタビューの模様をお届けします。

お楽しみに!

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