英国的・川辺でのピクニックの楽しみ方 英国の夏の風物詩 テムズ川のボートレース「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」(後編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

7月は、英国の夏の風物詩 テムズ川のボートレース「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」について。

英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話しいただきます。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!


ヘンリー・ロイヤル・レガッタを見るための特別なエリアである二つのエンクロ―ジャー(「レガッタ・エンクロ―ジャー」と「スチュワーズ・エンクロ―ジャー」)。
ゴールとは反対側にしばらく歩くと、その先に川辺が芝生になっている地域があります。
このエリアは無料。
大勢の人がピクニックをしています。
写真上:応援しに行ってしまった、その主の帰りを待つ椅子。
写真下:疾走するボートの目の前で観戦。

レガッタ・エンクロージャー、スチュワーズ・エンクロ―シャーではピクニックが許されていないため、ピクニックをしたい人はエンクロージャーを抜けて、このエリアへ来る人もいます。
ただし、ヘンリー・ロイヤル・レガッタの観戦場所として一番混雑するエリアなので、早めに場所を確保することが大切です。

ピクニックのスタイルもさまざまです。
今回「ああ、やっぱりレガッタでもこのスタイルでピクニックをするのね!」と思ったのが、車の傍らでするピクニックです。
写真上:ドレスコードなど特別な規則がない川辺で、リラックスして観戦を楽しむ人たち。
写真下:駐車場でのピクニック。テーブルセッティングは大切です。

これはヘンリー・ロイヤル・レガッタに限らず、他のイベントでも行われるスタイル。
駐車場からはレースの様子も、美しい景色も何も見えません。あるのは車だけ。
それでも駐車場にテーブルと椅子を持ち出してピクニックをするというのは、英国人だけ?

シャンパンやワインと共に、豪華なピクニックをする人もいれば、プラスチックや紙コップにおつまみ程度で簡単に済ませる人までさまざまです。
クラシックカーで来ている人もいましたが、私は大きなベントレーに惹かれて話を伺ってみました。

1929年もののベントレー・4.5リットル。
オーナーはこの車に乗ってヨーロッパ各地をドライブする、とのこと。
1ガロン(4.5リットル)で20km程しか走らないそうです。

数年前に北海道のニセコスキー場で6ヶ月働いたというウィルさんはボートも趣味というスポーツマン。
今はロンドンでフルタイムの仕事をしていますが、機会があったら再び日本へ行きたいとのこと。
写真上:ベントレー・4.5リットル。ベントレー史上最も有名なモデルの一つ。
写真下:「今度はサーフィンのトレーナーとして日本にいきたいんだ。」と語るウィルさん(一番左)。

ヘンリー・ロイヤル・レガッタの駐車料金は一日45ポンドというお値段。
でも駐車場でピクニックをしている人たちを見て、彼らは十分45ポンドの価値を楽しんでいると感じました。

川辺には、食べ物や品物を売るお店が所々に並んでいます。

パナマハットを売っているのはヘンリー・バリーハミルトン氏。
この日はピンチ・ヒッターでやってきたそう。

1970年からパナマハットに関連した仕事をしているそうですが、そんなのはまだひよこの部類で、
彼の友人の中には1930年からヘンリー・ロイヤル・レガッタでパナマハットを売っていた人もいるそうです。
写真左:帽子の歴史を熱心に語ってくれるヘンリー・バリーハミルトン氏。
写真右上:パナマハットにも色々なデザインがあります。
写真右下:アンティークのボーター・ハット。

彼の持っている“ボーターハット”に注目してください。
現在では太陽の日差しが強い日は、男性はパナマハットをかぶっていますが、古い写真を見るとボーターハットをかぶっています。

イタリアのゴンドラ漕ぐ人が使っていたことから、ボートを漕ぐ人が被る帽子をボーターハットと呼ぶようになったようです。
パナマハットがヨーロッパに入ってくる前、特に19世紀後半から20世紀前半にかけてはスポーツイベントでは藁でできたボーターハットが人気だったようです。

この日、二つのエンクロ―ジャー、そして無料で観戦できる川辺の合計3ヶ所を見学しました。
人々がそれぞれ自分に合った場所で、最大限に楽しんでいる光景を見ていると、「これぞ英国!」と心から思いました。

残念ながら今年は日本のチームには出会いませんでしたが、来年は出場することを願っています。
その際には私も再度観戦したいな……と考えています。

<木島・タイヴァース・由美子 プロフィール紹介>
英国政府公認ガイドとして30年以上にわたって英国全土の観光案内をする。

2015年に英国の文化に特化したツアーの企画、アドバイスを専門に扱うカルチャー・ツーリズムUKを設立。

現在は観光ガイドの他に毎月英国の観光、文化に関してのオンライン・トークを実施している。
バッキンガム州で夫、愛犬の3人暮らし。

その他、雑誌や新聞に寄稿。
著書に「小さな村を訪れる歓び」「イギリス人は甘いのがお好き」がある。


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