ロイヤル・コレクションとバッキンガム宮殿(中編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。
8月は、英国君主の公邸「バッキンガム宮殿」について。

英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話しいただきます。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!


公式接待の場である舞踏室(ボール・ルーム)は、年20回の叙勲式が行われ、受章者が女王陛下または代わりの王族から勲章を授けられる部屋です。一度に70~100名の受章者を迎えます。
また、外国の国家元首が英国を訪問される場合、公式訪問の初日に女王陛下を含む王族が歓迎晩餐会を催すのがこの部屋です。部屋の広さは長さ34m、幅18m、高さ14mになります。
楽団席では王室楽団が演奏し、それは最も華麗な晩餐会と言えるでしょう。正装をした方々は、王室コレクションの銀食器で飾られたU字型のテーブルで晩餐を楽しみます。
写真:2011年、オバマアメリカ元大統領ご夫妻が公式訪問された時の歓迎晩餐会。 ©Official White House Photo by Lawrence Jackson

このような晩餐会の準備はかなり前から行われます。銀食器を磨くことやワインの選択、そしてフラワーアレンジメントを含むテーブルセッティングなど綿密な計画が立てられます。
料理のメニューは王室お抱えのシェフがつくる逸品です。
写真上:晩餐会の準備は、長い時間をかけて念入りに行われます。
写真下:晩餐会のためのテーブルセッティング。©Shane L. Stone

絵画の間(ピクチャー・ギャラリー)はまるで美術館のようです。
ここではルーベンス、フェルメール、レンブラント、ヴァン・ダイクなど王室が所有する絵画が並びます。
その中でも目を惹くのはフェルメールの絵でしょう。現存するもので、フェルメールの手によるものであると確信されている34枚の絵のうちの1枚です。

写真左上:絵画の間は、正に美術館です。 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022
写真右:フェルメール作「音楽の稽古」 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022
写真左下:レンブラント作「造船技師とその妻」 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022


500年に渡り英国の君主が収集した芸術品はロイヤル・コレクションと呼ばれ、100万点以上に及びます。
その中には宮殿内の家具調度品の他、絵画、陶器、テキスタイル、甲冑、武器などが含まれます。その多くはバッキンガム宮殿に隣接するクイーンズ・ギャラリーや、他の宮殿で見学することが可能です。
バッキンガム宮殿の様々な部屋に飾られている多くの芸術品の中から2点をご紹介しましょう。
写真左:「緑の間」に飾られているセーヴル製ポプリの壺と蓋 (1758~59年製作) Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022
写真右:音楽愛好家であったヴィクトリア女王が1856年に購入し、現在白の間に置かれるグランドピアノ。 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022


さて、今年は女王のプラチナ・ジュビリーの年として「女王ご即位特別展示」が開催されています。1937年に行われたジョージ6世の戴冠式に当時11歳だったエリザベス王女がお召しになったドレスに始まり、1952年のご自身の即位後のポートレート写真の数々が展示されています。
ポートレートの多くは、1970年代まで英国の切手に描かれていた女王のシルエットがベースとなりました。
写真左上:Dorothy Wildingによる女王のポートレート写真 1952年 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022
写真右上:現在の切手にも使われている。
写真下:1821年に作られたダイヤモンドのダイアデム(王冠)。 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022

ジョージ4世の戴冠式のために1821年に制作されたダイヤモンドのダイアデム(王冠)は1,333個のダイヤがイングランド、スコットランド、アイルランドの象徴である薔薇、アザミ、シャムロック(三つ葉)を描き、その下を真珠が2列に配置されています。1837年の即位の際にヴィクトリア女王が受け継ぎ、最初の切手となるペニー・ブラックにこの王冠を被ったヴィクトリア女王が描かれています。その後、この王冠は歴代の王妃、そして現在の女王陛下に受継がれました。現在の英国の切手に描かれる女王陛下が被られているダイアデムでもあります。



後編へ続く…


次回は、実際に見学に来られていた観光客の方たちにインタビューをした際の様子をお届けします。

お楽しみに!

※記事に掲載されたイベント情報や商品は、売り切れ・変更・終了する場合がございます。
※売り切れの節は、ご容赦ください。
※表示価格は、消費税を含んだ税込価格です。