英国君主の公邸・バッキンガム宮殿(前編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

8月は、英国君主の公邸「バッキンガム宮殿」について。

英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話しいただきます。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!
写真上:衛兵の交替 これまで宮殿を警備していた近衛連隊が音楽を奏でながら兵舎に戻るところ ©Association Press・Alberto Pezzali
写真左下:バッキンガム宮殿とその手前に立つヴィクトリア女王の記念碑 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022
写真右下:バッキンガム・ハウス 1710年

現在バッキンガム宮殿は夏期のみ一般に公開されていますが、公開のきっかけとなったのは1992年に起こったウィンザー城の火災でした。この火災では115の部屋が消失しました。
そこでバッキンガム宮殿を一般に公開し、その入場料を修復資金に充てることが決まりました。

バッキンガム宮殿では450人が働いています。そこには19の公式の部屋、52の王族・来客用の寝室、88のスタッフの寝室、92の事務室、78のバスルームなど全部で775の部屋があります。
その他、宮殿西側にはおよそ日比谷公園と同じ広さの庭があります。
それでは一般に公開されている公式諸間19部屋のうち、いくつかをご案内しましょう。

まず南棟の「大使の入り口」から入館します。
中庭に面したところにはプラチナ・ジュビリーのお祝いの一環として開催されたビッグランチ(英国ライフ6月の読みもの参照)で、チャールズ皇太子が出席したオーバルクリケット場に飾られたものが見られます。
それは6mのテーブルに並べられた1,000個の英国伝統ピクニック・フードです。
これらは全てテキスタイル・アーティストであるルーシー・スパロウさんの作品で、フェルトでできています。
スコッチ・エッグ、ソーセージ・ロール、ポーク・パイ、ヴィクトリア・スポンジケーキ、パーティ・リング、プラチナ・プディングなど、まるで絵のように美しく並んでいます。
写真:フェルトで作られた英国伝統ピクニック・フード Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022

晩餐の間(ステート・ダイニング・ルーム)は、ウィリアム4世とヴィクトリア女王のための晩餐室として造られました。
ここでは、ジョージ1世からジョージ4世までの英国ハノーヴァー家の王とその王妃の肖像画が見られます。
現在、女王陛下はここで、慈善団体の支持者に感謝の意をこめたチャリティ・ディナーを催されます。
写真:晩餐の間
※バッキンガム宮殿の館内は撮影禁止です。掲載した写真は公式画像を借用しているため、実際の見学時の状況とは異なり、テーブルセッティングは見学では見ることができません。


白の客間(ホワイト・ドローイング・ルーム)は、白く塗られた壁の所々に金箔が施された美しい部屋です。
金箔は紙の1,000分の1の厚さの金を貼り付けていくもので、金箔工芸専門職の手によるものです。最高の技術を駆使して貼られた金箔が見事です。

この部屋では、毎年女王陛下のクリスマス・スピーチが撮影され、クリスマスにテレビで放送されます。
エドワード7世のお妃、アレクサンドラ王妃の肖像画の左にある鏡と箪笥は実は隠し扉になっていて、女王のプライベートの部屋と公式の部屋をつなぐ役割をしています。ここから女王や王族は目立たずに公式諸間に出入りすることができます。

写真上:白の客間 Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022
写真下:正面中心のアレクサンドラ王妃の左の鏡とその下の箪笥で作られている隠しドア。Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022

玉座の間(スローン・ルーム)は部屋というよりも劇場のようなデザインです。それもそのはず、設計したジョン・ナッシュは劇場建築デザイナーとしても知られていました。
客席と舞台を引き離すように作られたアーチも、その効果を狙ってのことでした。そして舞台に置かれた玉座とその上に掛けられた天蓋は、実に見事なデザインです。

エリザベス2世女王陛下とフィリップ殿下の玉座は、1953年のエリザベス女王の戴冠式のために作られたもので、まさに舞台の上で主役を待っているかのようです。
写真:玉座の間はまるで劇場を思わせるデザイン。Royal Collection Trust © Her Majesty Queen Elizabeth Ⅱ2022

中編へ続く…

次回は、公式な晩餐会に使われるボール・ルームの様子や、歴代の君主が収集した芸術品“ロイヤル・コレクション”、そしてプラチナ・ジュビリーに関連した特別展示についてお届けします。

お楽しみに!

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