英国王室主催の伝統ある競馬レース「ロイヤルアスコット」(前編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

今回は、英国王室主催の伝統ある競馬レース「ロイヤルアスコット」について。

ロンドン在住のKawasakiさんにお話しいただきます。


私は2年ほど前から仕事の関係でロンドンに住んでいます。今回「ロイヤルアスコット」(※)に参加する機会に恵まれました。

※「ロイヤルアスコット」…毎年6月の第3週に英国王室所有のアスコット競馬場にて開催される、英国王室主催の競馬レース。1711年にアン女王が現在の場所で王室主催の競馬を開催したのが始まり。会場はロイヤルファミリーが暮らすウィンザー城からほど近く、期間中は国王をはじめとするロイヤルファミリーが馬車で来られご臨席する。レース表彰式は国王自ら優勝トロフィーを贈呈するのが決まりとなっている。


「ロイヤルアスコット」といえば、「英国上流階級の社交場」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

ロンドンで見聞きする肌感覚としては、ロイヤルアスコットは格式を重んじつつも、「誰でも参加して楽しめる初夏のイベント」という雰囲気です。


写真:競馬のコースをチャールズ3世国王陛下とカミラ王妃が馬車に乗って登場されます。

「ロイヤルアスコット」のチケットは、インターネットで購入することができます。ここでポイントとなるのが、「どの観客エリアのチケットを手に入れるのか」ということです。

会場は4つの観客エリア「ロイヤル・エンクロージャー」「クイーン・アン・エンクロージャー」「ヴィレッジ・エンクロージャー」「ウィンザー・エンクロージャー」に分かれています。

「ロイヤル・エンクロージャー」はメンバーと特別に招待された人だけが入場できるエリアなので、一般にチケットは購入はできません。

他の3つのエリアは、誰でもチケットを購入することが出来ます。3つの中で一番高価な「クイーン・アン・エンクロージャー」で70ポンドから85ポンド(約13,000円~約16,000円)ほど。

どのエリアにもそれぞれドレスコードがあるので、事前に準備して行きましょう。女性はドレスに帽子、男性はスーツにネクタイを着ていく必要があります。

「ウィンザー・エンクロージャー」には決まったドレスコードは無いカジュアルなエリアですが、みなさんおしゃれを楽しんでいらっしゃいます。


写真:「ロイヤル・エンクロージャー」の場内では、男性は食事の時以外はシルクハットを取ることができません。

レースは5日間開催されますが、毎日のスケジュールはほぼ同じです。

午前10時半:開場。各エリアにカフェやレストラン、バーがあるので、グルメに舌鼓を打ちながらのんびりとレースが始まるのを待ちましょう。

午後2時:ロイヤルファミリーが馬車に乗って競馬場に到着します。2023年は連日チャールズ3世国王陛下がカミラ王妃とともに登場されていました。

午後2時30分:レースがスタート。午後6時過ぎまで、7つのレースが行われます。

会場の中に馬券売場があります。5日間で500頭あまりの馬たちが出場するそうです。会場で見た馬のお尻には、ステンシルで模様が描かれていました。

英国やアイルランドで訓練された馬が多かったですが、中には香港から来ている馬もいました。


写真:お尻の部分にはステンシルで描かれた模様が見えます。

写真:馬券売場に並ぶ人々。華がありますね。

さて、今回感じた「ロイヤルアスコット」の楽しみ方についてお話しいたします。

まず「ロイヤルアスコット」は競馬を楽しむ場です。(日本でいう「競馬」のイメージとは大いに違いますが…。)そして、毎年参加する英国人にとっては旧交をあたためる社交の場でもあります。

では、競馬にも詳しくなく英国人の知り合いもいない場合、何を楽しめばいいのか?おすすめは「食」です。

敷地内には、当日予約無しで入れるレストランから、5つ星のレストランまで多種多様なカフェやレストランがあります。中には1年前から予約を受け付けているお店もあります。

中でもおすすめは「アフタヌーンティー」。アスコット競馬場でアン女王がお茶を召し上がったのがここのアフタヌーンティーの始まりだそうで、1768年からなので250年以上の歴史があります。

暑い昼下がり、素敵な格好をした紳士淑女とともに、おしゃべりを楽しみながらお茶やスコーンをいただくなんて最高ですよね。

公式情報によれば、期間中に240,000個の手作りアフタヌーンティーケーキ、120,000個のスコーン、80,000杯の紅茶、60,000個のサンドイッチが食べられるそうです。

今回私は“Summer House”という、ビジネス関係者が招待される場所でビュッフェスタイルのアフタヌーンティーをいただきました。


写真:“Summer House”の内観。グリーンで統一されたインテリアが素敵でした。


写真:王道の、サンドウィッチ・スコーン・ケーキと紅茶を楽しむスタイルです。


スコーンはプレーンなものとゴールデンレーズンが入ったものがあり、たっぷりのジャムとクロテッドクリームをつけて頂きます。

サンドイッチは「コロネーションチキン」という1953年のエリザベス2世女王陛下の戴冠式の際に生まれたメニューで、カレー風味のチキンが入った珍しい味付け。

この時期はイチゴのシーズンですので、山盛りのイチゴに、可愛らしいケーキまで。美味しい紅茶と共に、ティータイムを堪能しました。


「ロイヤルアスコット」は日本で想像していた時は敷居の高いイベントだと思っていましたが、現地で体験してみると、ロンドン市内の地下鉄やタクシーに広告が出ていたり、百貨店には特設会場が作られたりと、ロンドンの人たちにとって初夏の風物詩のような存在でした。

入場チケットに加えてドレスや帽子、そしてお食事やアフタヌーンティーまで、それなりに軍資金が必要な機会ではありますが、足を運んでみると、ここにしかない空気、景色があります。

もちろんポッシュな(上流階級の)方達も多いですが、会場の横にある駐車場ではドレスアップした老若男女がリラックスして自前のテントを建て、持ち寄ったワインとサンドイッチでピクニックを楽しんでいる光景もあり、それぞれが英国の短い夏を楽しむ豊かな時間が流れていました。


皆さんも、もし6月後半に英国を旅する機会があれば、ちょっとした非日常を味わいにピクニック気分で「ロイヤルアスコット」に参加してみるのはいかがでしょうか。


写真:場内の芝生が美しく、思わず裸足で感触を確かめてしまいました。


次回に続く…

後編の記事では、「ロイヤルアスコット」のファッションについてお届けいたしますのでお楽しみに。


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