今回のテーマは"タッグスウェット"。
前回好評を博した"タッグＴ"に続き、和歌山大莫小メンバーが気になっていたファクトリーと手を組み、互いのアイデアとクラフトマンシップを一枚のスウェットに込めました。

ホシに願いを　￥20,900
風神莫大小×クラボウ（大阪）

「通常のコットン糸と比べて3〜4倍の吸水性があります」（クラボウ／中山さん）
「オールシーズン着て貰えるよう軽めに作りました」（風神莫大小／河上さん）

Z世代による2種類の吸水速乾糸をダブル使いした新時代スウェット
老舗紡績会社クラボウが開発した2種類の糸を使い、コットン80％でありながら、吸水速乾性をとことん追求し、今後のスウェットを変えてしまうかもしれない一枚。
手掛けたのは風神莫大小の河上さん（26）とクラボウの中山さん（24）の今回最年少のZ世代コンビ。
肌が当たる裏糸に用いられたのが珪藻構造糸と呼ばれる糸。多数の穴がある（多孔構造）の珪藻土の構造を参考に作られた糸は、その名の通り珪藻土のような吸水発散性を実現。
中糸にはスピンエアーという糸を使用。こちらも糸の内部に空洞を持つことで、通常の綿糸よりも吸水性に優れ、通気性がよく乾きやすいという特徴があります。加えて秋冬になると保温性も発揮します。
どちらもタオル向けに開発された糸で、吸水指数が800以上あれば高吸水とされるところ、この糸を使用したタオルの吸水指数は2868。およそ3.5倍の吸水性を誇ります。しかも後加工ではないので、機能は洗濯しても持続します。
そんな2種類の糸を組み合わせ初めてスウェットとして製品化。風神莫大小はヴィンテージスウェットのリプロダクトを得意とするニッターで、今回は、年代物のアズマ式の編み機を用いてヴィンテージ感を出しました。組織は18ゲージ裏毛。ベーシックなスウェットより気持ち薄くして、3シーズン着られる肉感です。
機能性だけでなく表糸にはオーガニックコットンを採用し環境にも配慮。淡いパープルはヴィンテージ感も楽しめるカラーでありながら、ユニセックスな雰囲気も同居するナイスチョイス。
ほぼコットンなのに早く乾く。部屋干しが当たり前になったZ世代の発想が生んだ一着です。

龍のバスローブ　￥29,150
阪和×シキボウ（大阪）

「正反対の糸を一緒に使うと聞いた時は驚きました」（シキボウ／佐々木さん）
「ドラゴンとロマンで編んだスウェット、和歌山大莫小が初出しです」（阪和／南方さん）

表はシャリ味の清涼感、裏は高級タオルの風合いでラグジュアリーな着心地
和歌山で生地のデパートと呼ばれる繊維メーカー・阪和と、今や祖業の繊維にとどまらず産業資材で日本のモノ作りを支えるシキボウは、戦前から取引がある、いわば勝手知ったる仲。阪和の代表・南方さんはシキボウが持つ相反する特徴を持つ2本の糸に目を付けます。
一つ目は「ドラゴンツイストクランチ」。これは細かい繊維を引き伸ばして空気の旋回流で撚りをかけるという紡績技法で、通常のリング紡績より、強いシャリ感と綺麗な目面が表現できます。この糸を表面に使いました。
裏面には極甘撚糸「デュアルロマン」を指名します。こちらは高級タオル向けに作られた精紡交撚糸（糸になる前段階の粗糸2本を紡績し、均一性が増して生地がより綺麗になります）で、シキボウの糸の中でもトップレベルの柔らかさと吸水性を誇ります。
程よい肉感の18ゲージの裏毛で、ドラゴンツイストクランチ30番手を表糸、裏糸にデュアルロマンの18番手を2本引き揃えて入れています。
凛とした美しい白が際立つ表地と、バスローブを思わせる優しい裏地が同居する孤高の一着。互いの糸と編みを知り尽くす両雄だからこそ実現したと言えるでしょう。

撚り道して火遊び　￥28,600
美和繊維工業×豊田絲業（大阪）

「和歌山大莫小では既存にないものを出したい。今回は糸にこだわりました」（美和繊維工業／風神さん）
「希少なピマコットンの細番手を三本束ねてガス焼きしたのは初めてです」（豊田絲業／豊田さん）

異番手・壁撚り・ガス焼きetc…とことん趣向を凝らした糸を丁寧に編み立てました
美和繊維工業は、度詰めした美しい目面で、過去の和歌山大莫小でも人気のニッターです。そんな美和繊維が今回タッグ先に選んだのは大阪の豊田絲業（とよたしぎょう）。撚糸やガス焼きを得意とする糸加工会社です。今回は、オーソドックスな18ゲージの裏毛に、豊田絲業の技術をフルに使ったガス焼き撚糸を使うことで、今までにないスウェットを開発しました。
表糸には、希少なピマコットンの細番手(80番)の杢糸3本を1本に撚った「三子撚り」が使われています。三子撚りにすることで強度が上がり、目面が綺麗に整います。
その三子撚りにガス焼きを施しました。ガス焼きとは、バーナーに糸を通して表面の毛羽を焼き取る技法で、豊田絲業では360度全方向から炎を当てることで均一に毛羽がとれます。細番手の三子撚りをさらに美しく仕上げ、輝くような杢グレーの表地を実現しています。
肌面の裏毛ループには、表で使われた80番の三子撚り糸に、20双糸を掛け合わせる、なんと5本を一本に撚り合わせた糸が使われています。番手が違う糸を合わせる手法は「壁撚り」と呼ばれ、スウェットに使われることは、極めて珍しいそう。「壁撚り」した糸は、表面に波打ったような凹凸が生まれ、シボ感のある織物を作る際に使われることが多いのだとか。
そのシボ感をスウェットの裏地に使って、肌離れのよさや着心地につなげようというのだから、まさに実験的な試み。
新しい発見は時に寄り道や遊びから生まれる。前向きな遊び心まで纏える一枚です。

ヨルメリー　￥25,850
フジボウテキスタイル× アサメリー（東京）

「今回は名前が先に決まりました」（アサメリー／岩木さん）
「生地が持つシャリ感を残しつつ柔軟加工をしています」（フジボウテキスタイル／伊東さん）

70年の歴史を誇る国民的肌着アサメリーがアウターにアップデート
日本製にこだわった肌着を作り続け今年で130年の歴史を誇るアングル。かつて「皇室御用達」として昭和天皇に肌着を納めていたこともあります。そんな同社の看板商品がアサメリー。その名の通りコットンで麻のような清涼感ある肌触りを実現したインナーウェアで、こちらも70年以上愛されるロングセラーアイテムとなっています。
このアサメリーを春夏に一枚でサマになるＴシャツとして提案したのが、前回のタッグＴ回の「ヒルメリー」。それに続けとばかりに今作は、秋冬の夜のお出かけにもピッタリなスウェットにアップデート、その名も「ヨルメリー」です。
アサメリーの特徴は“シャリ感”ですが、それを生み出しているのが、強く撚り、ガス焼きで毛羽を落としたオリジナル糸。
今回はそんなアサメリーの糸を用い、初の裏毛を編み立てました。
表糸にアサメリーの強撚ガス焼き糸の110番双糸、中糸にポリエステルが2%入ったコアスパンヤーンと呼ばれる糸を入れ、キックバックとハリ感を、裏糸はコットンの40番双糸できめ細かく肌あたりの良いタッチに仕上げました。編みは、大莫小の盟友・美和繊維工業による36ゲージの度詰めで高級感のある表情に仕上げています。そこへフジボウテキスタイルによる最高ソフト加工「マックソフトプレミアム」を施し、アサメリーを見事にハイクオリティスウェットへと昇華させています。
セピアブラウンは、アングルが打ち出す「レトロモダン」にちなんで吟味したカラー。リラックス感もありながら、品よく羽織れる大人のアウターとなっています。

フカキンとラクダ固め　￥70,400
A-GIRL'S×深喜毛織（大阪）

「日本ではあまり知られていませんが、ラクダはヨーロッパでは高級素材なんですよ」（深喜毛織／深井さん）
「キャメルの丸編みは相当マニアック。探してもないと思います」（A-GIRL'S／西さん）

最高級キャメルをフル使い。和歌山大莫小だから作れた超希少ニット
A-GIRL'Sは和歌山の老舗ファクトリーを背景に国内外のメゾンブランドが信頼を寄せるテキスタイルメーカー。これまでの和歌山大莫小では、カシミアやキッドモヘアといった希少な高級繊維を使ったアイテムをリリースしています。
そんなA-GIRL'Sが今回選んだのがキャメル（ラクダ毛）です。日本の毛織物メーカーとして唯一、カシミヤ・キャメル製造業者による国際団体「CCMI」に加盟している大阪の繊維製造メーカー「深喜毛織（ふかきけおり）」とタッグを組み、最もグレードの高いキャメル糸を使い、リブ以外（リブはウール）の全てを編み立てました。
キャメルが取れるのは寒暖差が大きい地域のフタコブラクダに限られ、その中でも太い毛を取り除き、産毛のみを集めた最高級のものが使われています。
色は天然のままで染色はされていません。表糸と中糸は通常のキャメル、裏糸にはホワイトキャメルという色の薄い毛が使われています。
糸番手は全て24番で、吊り編みでゆっくりと時間をかけて編み上げました。キャメルはヨーロッパでは高級素材とされ、カシミアに近く、ドライタッチという特徴があります。見た目は上品ですが、触るとカジュアルで、カシミアやモヘアとも違う魅力があります。
キャメルの第一人者である深喜毛織と高級素材のマイスター・A-GIRL'Sによる一撃必殺の激レアスウェット。ラクダの魅力を余すことなく味わえます。

その他、商品ラインアップはこちらから
＞＞＞「和歌山大莫小」第8章 タッグスウェット vol.2

シャンブレーカーズ　カネマサ莫大小×MOON CASTLE（大阪）
名人たちの起毛修正　紀南莫大小工場×ソトー（愛知）
ZENジャカード　丸和ニット×吉田染工（和歌山）
石川台 独立宣言　オカザキニット×大正紡績（大阪）
ガッチガチやぞ！ 羊なのに！　豊染工×井脇織物（和歌山）

この機会にぜひ、ニッターの想いが詰まったこだわりの素材に触れ、和歌山ニットの魅力をご体感ください。皆様のご来店を心よりお待ちしております。