英国の春は、食べて!走って!「パンケーキ・デイ」(中編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

2月は、「パンケーキ・デイ」について。

英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話いただきます。


〈前回の記事、【英国の春は、食べて!走って!「パンケーキ・デイ」(前編)】はこちらから〉


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!




パンケーキ・デイの日に行われる伝統的なイベントに、「パンケーキ・レース」があります。

フライパンにパンケーキを載せて走るレースです。ロンドンから北西に100kmほどの場所にある、「オルニー」という町のパンケーキ・レースが特に有名です。


そんなオルニーの町にある、家族経営のパンケーキ専門レストラン「パンケーキ・パーラー」を取材してきました。

町の中心、ハイストリートにある建物は17世紀の建物で、保存指定に登録されています。

写真:17世紀に建てられた、パンケーキ・パーラーの建物。

写真:古い石造りの建物、味があります。

建物は古くても中はモダンです。奥行きが深く、奥では大勢の人たちがパンケーキを楽しんでいました。

まず経営者であるジェニファーさんとジリアンさん姉妹にお話を伺いました。


写真:(左)妹のジリアンさん、(右)姉のジェニファーさん


木島:このパーラーはいつ頃オープンしたのですか?またオープンした理由を聞かせてください。

ジリアンさん:2016年にオープンしました。昔からパンケーキで有名なオルニーの町にパンケーキ専門店がないことを残念に思っていたのです。

そんな時、ここでコーヒーショップを経営していたお店が売りに出される、と言うことを父が聞きつけました。その後トントン拍子にパンケーキ・パーラーをオープンする話が決まりました。


木島:それまでのお二人のキャリアは?

ジェニファーさん:私は保育士で、ジリアンはここにあったコーヒーショップで仕事をしていました。


と、お話を伺っているうちにお父様のバリーさんが「こんにちは!」とジョイン。

バリーさんは、オルニーのパンケーキ・レース委員会の委員をされています。

そこで、バリーさんにパンケーキ・レースのことをお聞きしました。


木島:バリーさんご自身のこと、オルニーの町のこと、そしてパンケーキ・レースのことをお話ししてくださいますか?

バリーさん:私はこの町に28年間住んでいます。ですからパンケーキ・レースはいつも楽しみにしています。娘(ジリアンさん)も出場したことがありますよ。


ジリアンさん:6歳くらいの時でした。先頭を切って走っていたのですが、途中でパンケーキを落としてしまいました。

それで、引き返してパンケーキを再びフライパンに戻して走り続けたのです。そして、一等を逃しました。後で知ったのですが、パンケーキを落とした際は、そのまま走り続けても良かったんです。(笑)


木島:パンケーキ・レース委員会の委員は何名いらっしゃるのですか?そしてその仕事とは?報酬は?

バリーさん:委員は12名です。集会は、ここ「パンケーキ・パーラー」で行われます。

私たちの仕事はスポンサーとの話し合いから、大人、子どもの他、色々なカテゴリーのレースの計画、朝食会場となるマーキー(大きなテント)やそこに置く家具のレンタル、レースのための道路の閉鎖、また写真やビデオの撮影…

つまりレースに関するすべてを決め、実行するのが我々レース委員の仕事です。

私たちは報酬はいただきません。全てチャリティです。


木島:イベントからの収益金はどこに行くのでしょう?

バリーさん:教会です。また宝くじなどからの収益金も全てチャリティに行きます。


木島:女性のレースがメインのようですが、その他には?

バリーさん:ユーモアのある市議会議員レースや消防団員、救急隊員のレースもありますよ。

写真:子どものレース

©olneypancakerace.org


木島:レース、教会でのミサの他に、当日行われるイベントは何がありますか?

バリーさん:マーキーで提供される「パンケーキ・レース・デイ・ブレックファスト」は大人気です。

セレブリティ・シェフであるレズリー・ウォーターズさんがリーダーとなって朝食を作り、お客さまに提供します。

写真:シェフのレズリー・ウォーターズさん(左)

©olneypancakerace.org


木島:「パンケーキ・レース・デイ・ブレックファスト」とは何ですか?

バリーさん:まずプロセッコ(イタリアのスパークリングワイン)、またはオレンジジュースで始まります。

その後、ベリー類と、ココナッツ、シナモンのデュカ(中近東、主にエジプトで使われるナッツとスパイスを粗く砕いた調味料)を載せたヨーグルト。

メインはお好みでアメリカンスタイルのパンケーキに、カリカリのベーコン、トマトとバジルのラグー(煮込み)にルッコラを載せたもの。

またはアメリカンスタイルのパンケーキに、バナナとピーカン入りのバタースコッチソースを載せたものです。

そして紅茶かコーヒーが付きます。

チケットは12ポンドです。80名限定ですから、いつもすぐに完売です。

毎年地元の学校の7年生(11~12歳)の子供たちに、サービスのお手伝いをお願いしています。

写真:マーキーでサービスされる「パンケーキ・レース・デイ・ブレックファスト」

©olneypancakerace.org


木島:レースに出場するための決まりなどはあるのですか?

バリーさん:まずオルニーに3か月以上住んでいるか、または仕事をしていること。

スカートの着用は必須です。Tシャツや、スカーフ、フライパン、エプロンはレースのスポンサーが提供します。

女性のレースは25名限定で、早めに申し込むことをお勧めしています。


木島:レースはどのようにして始まるのでしょう?

バリーさん:まず教区委員がベルを鳴らし「Toss your pancakes!」と言ったら、フライパンの中のパンケーキを宙に放り投げます。

その後、教区委員は「準備は出来ましたか?位置について!用意ドン!」という具合です。

そしてゴールに入ってもう一回パンケーキを宙に放り投げます。


レースの後、参加者は教会のミサに出ます。





次回に続く…




次回は、ジェニファーさんとジリアンさんに伺った「パンケーキ・パーラー」のお店のことや、パンケーキ・レースのゴールでもある聖ピーター・聖ポール教会などについてお届けしますのでお楽しみに!


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