(大阪メトロ中央線「朝潮橋」駅から徒歩6分、八幡屋公園の向かいにショップが。ショップロゴは、デザート作りで大切にしている味と香りから、香りがたちのぼるさま、煙をイメージ。Sが隠れているのもポイント。)
1/25(水)から、3F コトコトステージ31にて開催するイベント"HANKYU.MODE GALLERY"。出店店舗の一つである、大阪・朝潮橋にショップを構えるデザート専門店「dessert place SHIKISAI(デザートプレイス シキサイ)」のシェフ 平山信行さんにHANKYU.MODEがインタビュー。
――今回、イベントに出店されることになった経緯を教えてください。
同じく今回の"HANKYU.MODE GALLERY"に出店されるスキンケアブランド「D.W.M.(ディーダブリューエム)」でフレグランス設計を担当している和泉侃さんから、朝比奈さん(阪急百貨店 ファッションディレクション担当者)を紹介されました。3F モードフロアでのイベントに出店しませんか、という話がありました。自分は元からファッションが好きで、特にマルジェラの考え方や哲学が好きだったんです。マルジェラの哲学をお菓子に置き換えて表現してみたこともあります。
今は自然をテーマにデザートを作っているのですが、ストーリーを考えてそれを形にする、という流れは、ファッションブランドがコレクションを作るときも同じだと思うんですね。なので、朝比奈さんからのファッションの話、異なるジャンルではありますが、プロフェッショナルな人やモノについて聞いていると面白かったですし、他の人がやっていなそうなことですし、チャレンジしたいなと思い、出店を決めました。
(お店のショーケースに並んでいるケーキ。ケーキの断面がきれいに見えることから地層と名付けられたシリーズ。テイクアウトで販売する場合、持ち運びに耐えうるようにケーキの固さを調節する必要があるが、その制約から開放され、より味や香りを追求されたケーキに。)
――デザート作りにおいて、こだわっていることを教えてください。
フレンチレストランで食べる味を、ご家庭で味わってほしいと考えています。フレンチレストランは価格帯が高いし、コースを食べきるのに2、3時間はかかってしまう。もっと気軽に楽しめるように、その味をテイクアウトで提供できたら。また、コーヒーが好きな方がご自宅で豆を挽くように、デザートも自分で作るという工程を楽しんでもらいたいと思いました。フォンダンショコラがそのきっかけですね。ご自宅で温めて、自分で最後の仕上げをしてもらうようなデザートになっています。あと、うちのアニバーサリーケーキには別添えでメレンゲをつけていて。仕上げにメレンゲをトッピングすることでフレンチレストランの味になるんです。
そして、香水によく使われるペアリングという考え方、食べ物だとフードペアリングになりますが、それをふまえバランスを考えたり、香水にある、トップ・ミドル・ラストの三段階のノートをデザートでも体験してほしいと思い、香りをベースに味を作る取り組みもしています。
誰もやっていない、挑戦したことのない味を、自分にはできると叶えていくのが楽しいですね。すべて分量を、パーセントを計算し、塩分やバター、粉を調節して作っています。アイスは糖度をチェックしながら作るのが大事なんです。アイスバターサンドクッキーのクリームは、冷たいまま食べられるやわらかさになる、ギリギリの糖度を計算して作っています。研究するのが好きで、探求心が旺盛だと思っていて、作っている自分のテンションがまず上がること、ワクワクすることを大事に思っています。
――店舗のこだわりを教えてください。
バスク地方でもそうだったのですが、軽井沢で働いていた時に、自然が多いところでデザートを作る方が創造力が掻き立てられるなと感じたんです。なので目の前に緑があるところを選びました。内装は、自然の中にあるものをテーマに、木や地層を意識。ブラックとグレーの間のようなカラーの天井は雲をイメージしています。季節によって商品の色が変わるので、それを際立たせる内装にしています。
シキサイサブレシリーズから、左上"樹液 唐がらしバスクの思い出"、左下"枝葉 ヒノキ香るお茶"、右上"木実 木苺キーズケーキサブレ"、右下"根株 カカオディアマン"
今回イベントに出すサブレは、すべて木をモチーフにしています。その中でも、"枝葉 ヒノキ香るお茶"と"木実 木苺キーズケーキサブレ"は、イベント先行販売となります。
"枝葉 ヒノキ香るお茶"は、緑茶の茶葉を粉砕したものとピスタチオペーストを生地に混ぜ、葉っぱの形に焼き、ヒノキオイルを入れたホワイトチョコレートとピスタチオをつけています。「D.W.M.」さんが、ダーウィンの植物の進化論をコンセプトにされていて、自分もお店に出している商品に、木をモチーフにした、樹皮に見立てたりしたお菓子などがあったので、今回は木を加工していく、その時の進化をテーマに新作を作りました。木になっていく境目の枝葉を表現するために、ナッツを使ったり緑茶をパウダーにして練り込んだり。もっと自然を感じさせるために、和泉侃さんからいただいたヒノキオイルを使い、森感を出しました。ヒノキオイルは今までに使ったことがないですし、きっと皆さんも食べたことがなくて楽しんでもらえるかなと。食べると口の中に一気に香りが広がりますよ。
"木実 木苺キーズケーキサブレ"は、クリームチーズとラズベリージャムを生地に練り込み焼いて、ホワイトチョコとラズベリークリスピーをつけています。枝葉が育った後、実がなるイメージから、木苺(ラズベリー)を使いました。チーズケーキのような味わいが楽しめるサブレです。
煙霞の樹変ちょこ
"根株 カカオディアマン"、"樹液 唐がらしバスクの思い出"、"枝葉 ヒノキ香るお茶"、"木実 木苺キーズケーキサブレ"を組み合わせた、こちらのクッキーの詰め合わせは、イベント先行発売となります。
煙霞痼疾(えんかのこしつ)という、自然をこよなく愛する人という意味の四字熟語があるのですが、そこから煙霞、もや、かすみがかった自然の風景という部分を拝借しました。このクッキーはすべて木をテーマにしていて、器の中で4種類が揃うことでひとつの木になるのですが、形として木が見えているわけではないので、そういう意味でかすみがかった、という部分に当てはまるなと思っています。樹変(きへん)は、事変とかけていて、再構築を象徴しています。また、すべてのクッキーの名前に木へんが入っていることもあり、"きへん"という読み方にしています。
容器は、捨てないもので、また他とはちがうものは何かと考えた時に、陶器を使ってみるのは?と朝比奈さんからアドバイスをもらい、面白い視点だなと思い、長崎の波佐見焼を採用しました。クッキーに彩りがあるので器に色はいらないなと思い、アイボリーに。オーバル型も可愛いですよね。あえて蓋を開けるまで中身が見えないことで、開けた時の喜びが増すと思います。
溶けだす山脈ショコラ 黒トリュフフォンダンショコラ
冷たいままでも、温かくしても食べられるフォンダンショコラです。フレンチレストランで出てくるようなリッチな味わいを家庭で楽しんで欲しいと思い作りました。ミシュランの星付きで使われるような、フランス産の黒トリュフと黒トリュフのオイルに、フランス産のチョコレートを使っています。トリュフの味を最大限にひきたてるために、はちみつと一緒にトリュフを削り、香りを引き立ててからチョコレートと合わせて生チョコにしています。ハイカカオの生地で、トリュフの生チョコを包んだフォンダンショコラ。冷たくてもおいしいですが、レンジで温めるととろけるフォンダンショコラに。バニラアイスを添えると、まさにフレンチレストランの味です。
霜柱 アイスバターサンドクッキー3種セット(苺、抹茶&チョコチップ、チョコチップ&アーモンド)
軽井沢で働いていた時に、初めて霜柱を見て、びっくりして。逆氷柱だ!と思ったんです。その時の印象をそのままに、霜柱のようにザクザクとしたクッキーで、冷たいお菓子を作ってみました。サブレがバタークリームと馴染んでしまってしっとりと一体化するより、食感がしっかりザクザクと残る方が好きなので、冷凍でも食べられるように、中のバタークリームの濃さを調整しています。お店でも人気のある商品です。
果蜜(洋梨/ライム、イチゴ)
好きじゃないものはお店で売らない、というポリシーがあるのですが、ケーキのパーツとしてはジャムが好きだけど、普段食べるときは甘すぎたりして、あまり好きではなくて。お店に出すなら、ヨーグルトやパンに使っておいしいものを出したいなと考えて作ったものが"果蜜"です。フルーツソースみたいな感じで、4~5時間くらい煮詰めて糖度を上げつつ、酸味を加えたり、バターを加えたりして口当たりを良くしました。酸味があるので、ちょうどいい甘さですっきりとした味わいになるんです。香りもよく何にでも合う仕上がりになりました。洋梨とライムは、もともと柑橘が好きなところから合わせてみて、とても好きになった組み合わせです。お菓子でもよく使います。
上記でご紹介した、シキサイサブレシリーズ、煙霞の樹変ちょこ、溶けだす山脈ショコラ 黒トリュフフォンダンショコラ、霜柱 アイスバターサンドクッキー3種セット、果蜜は、1/25(水)~31(火)、3F コトコトステージ31にて販売いたします。どうぞお楽しみに。
シェフ 平山信行
1986年大阪市生まれ。専門学校卒業後、ザ・リッツ・カールトン大阪「ラ・ベ」(ミシュラン一ッ星)にてレストランパティシエとしてのキャリアをスタート。
旧軽井沢ホテル・フレンチレストラン「ルシーニュ」でシェフパティシエ となりエグゼクティブシェフ・上野宗士氏の元で腕を磨く。2016年からは拠点をパリとし、ミシュランニッ星「ル ムーリス」にて世界最高のシェフ・パティシエに選ばれたセドリック・グロレ氏の元で修行を重ねた後、「ル ムーリス アラン・デュカス」のグランシェフだったクリストフ・サンターニュ氏が構える「パピヨン」にてシェフパティシエに就任。現地スタッフへの技術指導を行う。
帰国後、ハイアット リージェンシー大阪に勤務し数々の商品を手掛ける。 2018年クリームチーズコンテスト デセール部門で全国TOP3を獲得。2020年に自身のデザート専門店「dessert place SHIKISAI」をオープン。