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「re: edition project 165」ブランドを再スタートさせる、コシノヒロコさんと小篠ゆまさん。クリエーションをつなぐ新しい挑戦が、この春はじまる。
日本を代表するファッションデザイナー、コシノヒロコさん。「re: edition project 165」は、その輝かしいコレクションアーカイブから選び抜いたデザインを、今を生きる人に向けてリモデルしたブランドです。今春、クリエイティブディレクターに娘である小篠ゆまさんが新たに就任し再スタート。幕開けとなる阪急うめだ本店でのイベントに先駆けて、お二人にご登場いただきブランドの目指すもの、そしてつなぎ続けるクリエーションについて話を伺いました。
re: edition project 165 Capsule Collection
◎2月28日(水)~3月12日(火)
◎6階 コトコトステージ61、プロモーションスペース61
◆「re: edition project 165」を通して受け継がれるクリエーションはこちら>>>
◆コシノヒロコ×小篠ゆま スペシャルトーク動画はこちら>>>
◆re: edition project 165 Capsule Collection 開催イベントについてはこちら>>>>
◆アーカイブに新しい光を当てた「re: edition project 165」
2014年のコレクションの作品(左)とリエディションされて誕生した「re: edition project 165」の作品(右)。コシノヒロコさんのクリエーションの息遣いをクリアに今に伝えていく一着に。
訪れたのは芦屋・奥池にあるKHギャラリー芦屋。コシノヒロコさんの元私邸であり、家族と共に暮らしたゆかりの場所。今はコシノヒロコさんのアート作品を紹介するギャラリーとして開かれています。
建築家・安藤忠雄の設計によるコンクリート打ち放しの空間に差し込むやわらかな光。そこに置かれたのはコシノヒロコさんのアーカイブ作品とリモデルされた「re: edition project 165」のプロダクトです。
「これは10年前、秋冬コレクションの作品ね」と作品の細部を整え確認する時は、スッと仕事場の表情になるコシノヒロコさん。「そう、この頃からニットのこういう立体的なテクニックを取り入れていたのよね」と応じる小篠ゆまさん。当時東京で開かれたコレクションは満場から大きな喝采を受けたそう。そしてその横には新作のミニマムなブラックドレス。同じく最新の技術を駆使して、ニットでありながら立体感のある美しいシルエットが印象的。エレガントな中にも独特の個性が浮かび上がります。
◆世界を舞台に勝負してきた、コシノヒロコさんの情熱とクリエーション
コシノヒロコさんの膨大なアーカイブから。選び抜いた作品を再解釈して「re: edition project 165」が生まれる。
ひと言でアーカイブといっても、コシノヒロコさんの60数年にも及ぶコレクションは膨大です。1964年に大阪・心斎橋にオートクチュールのアトリエを開設したのを皮切りに、1978年にはローマのオートクチュールに東洋人として初めて参加。注目を集めて以降、パリをはじめ各地でコレクションを発表し、世界を舞台に活躍されてきました。
コシノヒロコさんのクリエーションは、いわば日本のファッション史を語る上で欠かせない存在。きものから着想を得て、平面的な一枚の布から立体的に仕立てて表現する、和と洋を融合させた独特のクリエーションは世界に衝撃を与え、常に挑戦的と評されました。
「毎年毎年新しいコレクションを発表していく、もう永遠に続けていかなきゃいけないんですね。私の持ってる重要なコンセプト、ひとつの軸があるとして、ずっとぶれずに新しいものをクリエーションしていくということは、自分らしさを確実に出していかないといけない。それを継続していくということはね、非常に難しいことなんです」
厳しい環境に身を置き常にチャレンジを重ねてきた年月、膨大なアーカイブはその軌跡そのもの。「私たちデザイナーは、自分のそういった生活が身についている、何を見ても自分のものに引き込んでいく能力が自然と育ってくるんですよ。それは努力とかじゃなくてね、やっぱり好きなんです。ファッションっていうのが。好きだからこそやれるんですね。義務感だけでやっていたらこれだけ長くは続かない」、そう自信に満ちた表情で語ります。
◆絵を描くことから導かれたコシノヒロコさんのクリエーションの原点
とにかく絵が大好きな子ども時代。祖父に連れられて見た歌舞伎に魅せられ、道に白墨で再現してみせたこともあったそう。
60数年にもわたり第一線で創作を続けたコシノヒロコさん、その原点はどこにあるのでしょう? 「私はもともと絵描きになりたかったんですよね。小さい頃から絵が大好きで。それで母が、本当に食べるものもない戦争の最中に、なんと3段構えのすごいパステルを買ってきてくれたんですよ」。普通ならお米などを買ってくるところ、手渡されたパステルは小さなヒロコさんに大いなるときめきをもたらしたに違いありません。
「そういう時代であっても、私が持っている才能をどのように生かすか、ある意味本当の親の愛情だと思います。クリエーションの原点はそうしたエピソードの中にあるように思います」。その後、絵描きの道は反対され、スタイル画が描けるファッションの世界へ。表現する喜びは新しいフィールドで昇華されることになったのです。
ファッションデザイナーとして活躍しながら、再び絵筆を持ち、画家・アーティストとして作品を発表、現在もアトリエで制作されているそう。「絵を描くということと洋服をつくること、こういうものが私の中では一体になっていて、本当にアイデアが枯れていかないんですね。この年齢になって、やっぱり今でもこんなものを作りたい、こんな絵を描きたい、こんな服を着てみたい、そんな溢れ出るような欲望が全然衰えないですね。結局、原点はそこだと思う。人間でないとできない独特の、欲望ってのかしら、そういうものがやはり私のエネルギーとして常に蓄えられているんですね」
◆小篠ゆまさんの手で再スタートをきる「re: edition project 165」
クリエイティブディレクターとして「re: edition project 165」を再スタートさせた小篠ゆまさん。アーカイブ作品にも携わってこられました。
再スタートを迎える「re: edition project 165」。165は“ヒロコ”を表しています。コレクションを再編集するのは娘であり同様にファッションデザイナーの道を歩んでこられた小篠ゆまさんです。「アーカイブを見るたびに思うんですが、先頭を走るデザイナー、コシノヒロコからエネルギーをもらい、周りのデザイナーたちがどう触発されて、どんな力強い作品を作ってきたか、アーカイブはその証だと思いますね。それを伝えていくことが使命ですし、アーカイブを見ることによって、またそのエネルギーをもらう感じがします」
そして60数年の歴史を持ったうえで新たなストーリーを築くことは実は多くのブランドができることではない、とも。「単純に新しくリエディションしました、新しいお洋服の提案です、というのではなくて。しっかりと歴史なりストーリーなりを語れるものとして、そうしたライフスタイルもひとまとめにご提案する、そこにすごくポイントがあると思っています」
◆醸成された和と洋の融合が、今の時代に合う形で表現された新作
「re: edition project 165」の新作は“デザインには個性を、シルエットには品性を”をテーマに本当によいもの、ハイクオリティーにこだわった作品。シンプルながら美しい品格を醸し出しています。
「re: edition project 165」新作の一部。
小篠ゆまさん着用のドレスは、やわらかいジョーゼットの前面にスモッキングを施すハイテクニックで立体的に見せたもの。女性らしいシルエットとゴージャス感が美しい一着。198,000円。
(左上)手前はアーカイブからインスパイアされた、ニットを立体で表現したドレス。個性的な立体縫製のフレアが歩く姿をエレガントに見せる。176,000円。奥は立体的な襟と袖が他にない個性を演出したパンツスーツ。ジャケット143,000円。パンツ64,900円。(右上)中央に5本のタックを入れ、きもののように一枚の布を立体的な洋服に表現した軽やかなドレス。108,900円。(左下)メロウなフリルが繊細かつアトラクティブにも見せてくれる白一色のブラウス。97,900円。(右下)帯のようにハイウエスト位置にしたリボンがポイントのドレス。リボンもスカートと同じ一枚の布で構成されている。154,000円。
◆「re: edition project 165」を通して受け継がれるクリエーション
クリエイティブディレクターとして指揮を執る小篠ゆまさんは、誰よりもそばでコシノヒロコさんのクリエーションに触れ、感じてこられてきた方。大切にしたいのはクリエーションの本質を伝えることだと言います。「コシノヒロコが培ってきたエネルギーをブランドを通して、今の時代に生きる人々のマインドや歩調に合わせながら、伝えていきたいですね。コシノヒロコの本能が創り上げてきたものは一朝一夕でできるものではない。この重みと貴重なものを、皆さんには服を通じてライブな感覚で体験してほしいと思います」一方でコシノヒロコさんにとっても小篠ゆまさんはとても頼もしい存在。「小さい時から私のクリエーションをずっと見てきた。もう本当に遺伝子としてね、入ってるわけですよ。クリエーションをつないでいく非常に大きな要素になっている。我々がつくってきた軸から外れることなく、今の人たちに大いに受け入れられる、そういういいものをつくっていくための、これは他人にはできないっていうところがあるんですよね」と期待を寄せます。
母から娘へ受け継がれていくことは他にないブランド独自の個性となるはず、とも。クリエーションについて、ブランドのあり方について語るお二人。
さらに、思いは次の世代へとつないでいくことへ。「今までものをつくってきた、ここまで残してきたことが決して無駄になってない。そして今後も永遠に生かされていく。本当にブランディングっていうのはね、そういう意味では未来永劫でないとダメなの。本当にいいものって、何代何代って連なってきましたよね。そうして改めて、すごく大きなものになっていくわけです」とコシノヒロコさん。
「バーチャルな感覚が増えた世の中だからこそ、フィジカルに感じられるいいもの、人間がつくってきたエネルギーみたいなものが、今、本当に求められていると思うんです。コシノヒロコの軌跡を通じて、それこそ“人間の欲望が何を生み出すか”というところまできちんとわかったうえで、皆さんにお伝えしていきたいなと思っています」と小篠ゆまさんは力強く語ります。
「中途半端なものは残っていかない。では価値のあるものはどういうものなのか、我々としていちばん語りたいのは、ずっと続けてきた歴史なんですね。長年かかったからこそ、これだけのものができるという重みなんです」とコシノヒロコさん。今までの歴史をないがしろにせず最大限に生かしていくことは現代の人々に還元していくとことでもある、とも。「自分たちだけがいいというのではなく、世の中の人が本当に喜んで、美しくなっていけば最高じゃないですか? 目指すところはそこなんですよね」
歴史を、クリエーションの重みを受け継いで新たに出発する「re: edition project 165」。そのストーリーを知れば知るほど、装う私たちにも自信とエネルギーを与えてくれそう。今を美しく力強く、そして自分らしく生きるために頼もしい味方になってくれることでしょう。
◆コシノヒロコ×小篠ゆま スペシャルトーク動画
コシノヒロコ:
大阪生まれ。文化服装学院在学中よりキャリアを重ね、東京、パリ、ローマ、上海、ソウル、台北などでコレクションを発表。近年はアーティストとしても精力的に活動し、2013年KHギャラリー芦屋をオープン。2021年4月より6月まで、兵庫県立美術館で『コシノヒロコ展』を大々的に開催した。1997年第15回毎日ファッション大賞、2001年大阪芸術賞受賞。
小篠ゆま:
◆re: edition project 165 Capsule Collection イベントを開催
「HIROKO KOSHINO」の60数年におよぶコレクションアーカイブから選び抜いたデザインを、現代女性に向けてリモデルした「re: edition project 165」。膨大なコレクションのアーカイブを紐解き、個性的なデザインと洗練されたスタイリングを提案します。
期間中、コトコトステージ61、プロモーションスペース61では、「re: edition project 165」春の新作コレクションが一堂に。あわせて「HIROKO KOSHINO」コレクションのアーカイブがお目見えします。ぜひ、この機会にご覧くださいませ。
【コシノヒロコ × 小篠ゆま トークショー】
◎3月2日(土)午後2時〜2時30分
re: edition project 165 Capsule Collection
◎2月28日(水)~3月12日(火)
◎6階 コトコトステージ61、プロモーションスペース61
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