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今年ほど早く秋になってと望んだ年はありません。
ようやく訪れだ季節の移り変わりと共にに、今年の9月29日は中秋の名月を迎えます。
この時期、イモ類の収穫への感謝と豊作を願うことから「芋名月」とも呼ばれています。
昔は里芋、山芋をはじめとした雑穀や麦類などをお供えしていたようです。
お団子をお供えする習慣は、もともと里芋を模して始まったとも言われています。
里芋
里芋や山芋は芋類の中でも最も日本で古くから食べられていた作物です。
里芋の葉柄の下の親芋から小芋、そしてその小芋の節から孫芋、さらにひ孫が付いて育つことから、子孫繁栄の象徴として、お正月のお節料理にも取り入られている食材です。
里芋の最大の特長は、その優しい味わいと、独特のこっくりとしたぬめり。
このぬめりは食物繊維の一種で胃腸の健康をサポートしてくれることが期待されています。
さらに満腹感が得られる野菜でありながら、イモ類の中で非常に低カロリー。
加熱することで含まれる炭水化物が消化、吸収されやすいと言われています。
里芋の皮剥きに苦手意識がある方におすすめの方法をいくつかご紹介します。
皮付きのまま洗いラップで包み電子レンジ加熱するか、蒸すことで、粗熱が取れた後、包丁で少し手がかりをつけるだけで皮が簡単に剥けます。
さらに洗って水気をふき取り皮付きのまま冷凍保存しておくと、加熱後にも皮が簡単に剥けます。
里芋の皮の下には針状の結晶のシュウ酸カルシウムが含まれており、これが皮膚を刺激してかゆみの原因となります。ですが乾燥や熱に弱いので皮を洗った後に乾燥させるか、加熱することでその刺激を防ぐことができます。
さて、蒸した里芋の皮を剥いた後の表面のぬめりを生かした一品「里芋まぶし」を。
今年漬けた梅干しの副産物である赤紫蘇で作ったゆかりや、青のり塩、ごま塩をボウルに用意。
そのボウルに蒸して皮を剥いた里芋を入れて、コロコロと転がしながら表面にしっかりとまぶします。
紅葉し始める木々を連想させるような、おはぎにも見える可愛さは、秋のお弁当のおかずとしても活用できる
手軽さも魅力です。
湿度が減り空気が澄み、空に浮かぶ月も一層美しく見え始める時期です。
十五夜や、十五夜の翌日にためらうようにゆっくり月が顔を出す十六夜(いざよい)。
さらに立待月(たちまちづき)や居待月(いまちづき)など名前をつけて月を楽しみ親しむ心。
季節のこれから旬を迎える食材、里芋と共に留めておきたいものです。
<プロフィール>
伊藤 由香 (いとう ゆか)
野菜ソムリエプロ百貨店・野菜ソムリエ協会講師、レシピ提案等で活躍中。長年西洋料理を学んだ後、野菜ソムリエに。旬の野菜を使った食のセミナーはもちろん、自身の子育て経験を生かしたレシピ提案など、親子でできる野菜・果物の特徴を活かしたメニューを得意とする。